第174話 劉gと劉j
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蔡徳珪の元を離れるのが筋であろう。蔡徳珪に拘束されていたなどと世迷言を言うつもりか? ここに引き立てられた時の貴様は余に恨みに満ちた目を向けておった。貴様は自らの意思で襄陽城に篭ったのだ」
正宗は劉jの父をねめつけるように凝視し強い口調で詰問した。
「違います! 弁明の機会を!」
「これ以上の議論は不要! 衛兵、この二人のただちに処刑しろ。首は街道に晒し、身体は野に打ち捨てよ!」
正宗は劉jの父と会話を打ちきり、衛兵に矢継ぎ早に命令した。衛兵は喚き散らす劉jの父を取り押さえ引きずって行った。
「姉上、助けて! お願い! 助けて!」
劉jは衛兵に引きづられながら泣きじゃくり劉gに助けを求めた。劉gは膝を折り自らの耳を塞ぐと身体を小さくさせ、劉jが連行されるのを必死で無視しようとしていた。
「劉g殿」
正宗は椅子から立ち上がり劉gに近づくと膝を折り体勢を落とした。
「劉g殿、よく耐えられた。全ての罪は蔡一族のみが背負えばいい。劉景升殿が背負う必要はない」
正宗は劉gの左肩に手を置いた。劉gはゆっくりと手を耳から放すと顔を上げた。その表情は今にも泣きそうな表情で、必死に泣くのを堪えているようだった。
「劉車騎将軍、これで母は助かるのですね?」
劉gは縋るような目で正宗を見ていた。正宗はゆっくりと頷いた。
「劉景升殿の義妹が反乱を起したのだ。このままでは劉景升殿は官位官職を失うのは免れんだろう。それどころか命すら危うい。しかし、劉景升殿の娘である貴殿が蔡一族の処断で迷うことなく英断を下された。余が証人となり、劉景升殿を弁護し守ってみせる」
「劉車騎将軍、お願いいたします。私が頼ることの出来る御方は劉車騎将軍のみにございます。どうか母をお救いください」
劉gは正宗に手をつき頼み込んだ。
「顔を上げられよ。劉g殿、これからは余に頼るとよい」
「ありがとうございます」
劉gは正宗に感謝し礼を述べた。
この日、老若男女を問わず人の泣き叫ぶ声が止むことはなかった。捕らえられた蔡一族は一人残らず処刑され、首を街道に晒された。その首の数は千を超えた。その凄惨な光景に、栄華を極めた蔡一族がたった数ヶ月で滅亡したことに、荊州の民達は正宗に畏怖を感じていた。
だが、同時に荊州の民達は正宗に畏敬を抱かせた。正宗は略奪を行った義勇兵を身分を問わず処刑したからである。この中には正宗に総攻めに参加することを申し出た気味の悪い豪族と山賊崩れと思われる凶相の男も含まれていた。また、正宗は襄陽城に残された私財を全て荊州の国庫に納めさせた。これら一連の行為を伝え聞いた荊州の民達に正宗の高潔さを印象づけることになった。
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