第174話 劉gと劉j
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した。だが、正宗を見る彼の目からは正宗への憎しみが垣間見えた。彼は必死に憎悪の感情を隠そうとしているようだったが、妹の蔡瑁を討ち取られたことへの怒りは抑えることはできないのだろう。
「蔡一族に連なる者は一人残らず死罪だ。朝敵に連なる者の末路を想像出来ぬほど世間知らずではあるまい」
正宗の言葉に劉jと彼女の父は表情を凍りつかせ体を固まらせた。劉jに至っては口を震わせ喋ることができないようだった。彼女の父は周囲に視線を向け、紗耶香で目を止めた。紗耶香は気まずそうに彼から視線を逸らした。彼女の夫は劉jの父の兄に当たる人物である。当然、二人はお互いに顔見知りのはずだ。
「車騎将軍、紗耶香殿の夫は私の兄でございます。彼女の息子も蔡一族に連なる者。二人の扱いはいかがされるのです」
劉jの父は正宗に必死な表情で助命を引きだそうと話し出した。紗耶香の夫と息子が蔡一族と近親者であるにも関わらず、助命されたことを噂で聞き及んでいたのかもしれない。この場に紗耶香が居ることで更に噂に確信を持ったのだろう。
「紗耶香は夫と息子の両目と両足の腱を斬って朝廷に対し謀反の意思がないことを自ら示した」
正宗は淡々と感情の篭らない目で劉jの父を見た。
「貴様とは比較にすらならない。貴様は襄陽城に最後まで篭り、官軍に徹底抗戦を行い朝廷に対し反旗を翻したいたではないか」
正宗は冷徹な声音で劉jの父に言った。
「私に何かあれば母上は黙っていません」
劉jは震える声で正宗を非難した。彼女の様子は周囲に視線を泳がし、救いを求めているように見えた。
「罪人を詮議し適切に処刑することに何の問題がある。罪人を見逃すことの方が大問題であろう」
正宗は言葉を一旦切った。
「この戦場における余の判断は皇帝陛下のご意思と心得よ。その意思に不服を申さば、劉景升殿とて朝廷に弓を引く謀反人となる。朝廷の忠臣であられる劉景升殿が愚かな判断をされるであろうかな?」
「母上は黙っていません! 母は九卿まで努めた方です。朝廷にも多く知り合いがいます。きっと貴方を許しはしないでしょう」
劉jは正宗に対し虚勢を張った。
「九卿の地位まで昇りつめたからこそ、余の決定に異を唱えることはない。お前の叔母が何をしでかしたのか理解できないのか」
正宗は鋭い目で劉jを見た。劉jは言葉を詰まらせた。
「そうであった。伊斗香、劉g殿をこの場にお呼びいたせ」
劉jと劉jの父は意外な人物の名前に混乱した表情に変わった。
伊斗香は正宗に拱手ししばしの間席を外した後、劉gを連れて現れた。劉gは正宗に拱手し深々とお辞儀すると劉jと少し離れた場所に立った。
「劉g殿、体の調子は如何かな」
正宗は劉j達とは異なり、友好的
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