Side Story
少女怪盗と仮面の神父 2
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事したらフルボッコにされそう」
怖い。女の人、めちゃくちゃ怖い。芸人が居るならともかく、神父を相手に何故こうなる。
衆人環視? 違う。これは囚人監視だ。囚人とは無論、女衆のきゃわきゃわ攻撃を一身に受けている神父を指す。
ほぼ無人の教会をたった一日でこんなにも賑やかにしてしまった神父は、よほど顔が良いのか高濃度のフェロモンでも振り撒いているのか。どちらにせよ……と、目蓋を伏せて扉を閉めようとしたら、突然視界が広くなった。
「どうなさいました?」
「……!」
誰かに扉を開かれた。
反射で声の元を見上げ、言葉を失う。
彫刻だ。金色の長い絹糸と琥珀色に近い宝石二つを埋め込んだ、動く彫刻。
透明感漂う白い肌。高めにスッと通った鼻梁。柔和な微笑みを浮かべながらも芯の強さを滲ませる目元や口元には、人間らしい隙が全く感じられない。全身を覆う真っ白な衣が余計に現実味を遠ざけている。
この彫刻……もとい、人が新しい神父だろうか。
なるほど、美形が大好きな女衆が騒ぐのも当然だ。しかし、いつの間に接近していたのか。
いやいや、それより
「……女の、神父?」
背は高い。見上げる首が痛みそうだ。
が、全体の線の細さや声は女性に近い。気がする。
「……よく間違われますが、生物学の視点では男性に分類されていますね」
ふんわり微笑む相手に「嘘だッ!」と声を荒げる勇気は、さすがのミートリッテにも無い。人外生物に化かされた気分になりつつも、姿勢を正して頭を下げる。
「失礼しました、神父様。非礼をお赦しください」
「いえ、慣れていますから。どうぞ、お入りください。外は風が強くて大変でしょう」
細長くて綺麗な白い手が、甲を下にして礼拝堂を示す。その向こうで鋭く光る嫉妬の眼差し達。
怖い。怖すぎる。
「……ありがとうございます」
帰りたい。本当に今直ぐ帰りたい。そして、二度と教会には来たくない。
だが、此処で逃げ出してはいけない。ハウィスの安全を思えば、優しかった村人達による狂気染みた視線の集中砲火など、大した事ではない。ひたすら怖いだけだ。
意を決して踏み入れば、背後で静かに扉を閉められた。
断首台へ上る絶望感とはこんなものだろうか。
色彩豊かな礼拝堂内の全てが白黒の濃淡に切り替わった気がする。気の所為だけど。
「アリア様に祈りを捧げても良いでしょうか?」
「勿論です。女神アリアは、いつでも貴女の心をお導きくださいます」
「では、御前に伺います」
「ごゆるりと」
あっさり離れてくれた神父に安堵し、女衆を避けて祭壇へ向かう。
再びきゃわきゃわと囲まれてしまった神父には申し訳ないが、足止めされてくれるなら絶好の機会だ。それとなく内部調査をさせてもらおう。
壁の凹凸、柱同
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