暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 2
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周りの人達への直接的な危害にある。今も何処かから村を見張っているのだろう。下手な動きをしたらハウィスがどんな目に遭わされるか……考えたくもない。
 頭の中には「嫌」の一文字しかなくても、一番安全で確実な手段は『依頼』の完遂だ。仕方ない、仕方ないと唱えながら、住宅区へ続く坂道をてくてく下る。
 いつもなら心地好い潮風が、妙にじめっとして気持ち悪く感じた。



 果樹園を降って直ぐの菜園を抜け、海の方角へ村の輪郭を辿るようにもう一度長い坂道を上ると、その先に真っ白な外壁が特徴的なアリア信仰の教会が建っている。
 海に突き出した三日月の先端だけあって吹く風は強く、それなりに高い場所なので微妙に息苦しい。
 防風林のつもりか、敷地内に伸びる太い木々はよくしなり、たまに飛ばされて来る葉っぱが顔や体にぶつかって地味に痛い。
 信仰心を持たないミートリッテは、外門まで近寄るのも今日が初めてだが……もしや教会に人が来なかった理由って、この葉っぱ攻撃じゃないのか。
 ごぉおおおーと耳を撃つ風の音は敷地内へ忍び込む際に気配を消してくれそうだが……こんな環境下で一人寂しく暮らしていた前任の神父が、物凄く哀れに思えた。
 とにかく現場を直に見なければと白銀のアーチを潜り、正面入口まで足を進める。両開きの大きな扉は閉まっているが、単純に風避けが目的なのだろう。鍵は掛かってない。
 「お邪魔しまー……」
 扉の片方をそーっと開いて中を覗き……唖然とした。
 色鮮やかに輝くステンドグラスを背負った、二階建て家屋に匹敵する高さの女神像。入口から祭壇まで一直線に伸びる赤い絨毯を敷いた広い通路。その両脇に、左右対象で高い天井を支える計六本の太い石柱と、五人並んで座れる白塗りの木製長椅子が計十脚。左右の壁一面に活き活きと描かれた神代の生物達が、限られた空間を奥深く演出している。
 大きい。
 外観より内側のほうが広く高く感じる。
 騙し絵とか錯視とか、そういう類いの視覚効果だろうか。建築家と画師が織り成す、見事な業の結晶だ。
 しかし……内装より装飾品より真っ先に目に付いた、あれは何だ。
 「神父様、私の迷いを聴いてくださいますか?」
 「神父様。これ、ウチの畑で採れた野菜なんですけど、よかったら食べてみてください!」
 「神父様、神父様」
 礼拝堂の中央。
 一際背が高い……容姿ははっきり見えないが、神父? にわらわらと群がる女、女、女、女、女。
 何処から出て来た女衆。いったい、何十人居るのか。普段村中を歩き回ってても、こんなにたくさん集まってる場面など絶対に見掛けない。礼拝堂の床という床を女だけで占領しているのでは……と目を疑いたくなる光景に、かつてなく激しい戦慄が走った。
 「うあー……こりゃ確かに近寄りたくないわ……。ちょっとでも変な
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