第10話 眼
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そこには、さきほどの巴紋が浮かぶ眼が浮かび上がって、不良の男を見下すように見上げた。
「ま、またその眼」
チンピラの男は、味わったことのない恐怖が襲い掛かってきた。全てを見透かし、ひっくり返すのようなサソリの眼に身震いをした。
不良の男は、落ちている鉄パイプを掴むと能力を発動して、距離感を狂わせながら倒れているサソリ目掛けて振りかぶった。
「あっ!!」
白井は抑えていた脇腹から手を放して、サソリを庇うように覆いかぶさった。
これは一般人を守るための行動
一般人を守るための行動
白井は頭の中でそう復唱した。
決して自分本位ではない
ジャッジメントとしての使命として、身体を動かすために
「くっ!!てめえ」
サソリは倒れている状態から手だけを動かして、白井の腕を掴むと力任せに体勢を崩す。
構えていた衝撃とは違い、容易に白井は引っ張られた腕を下にして床へと寝転ばせられた。
白井が慌てて顔を上げると
「終わりだ!!」
と歪みながらも真っすぐ振り下ろされる鉄パイプがサソリを狙って振り下ろされていくのが見えた。
「あ……」
白井の目の前が白く変わっていくのが見えた。これは最悪の事態を想起していながら動けない自分の弱さの色。
相手の能力の特性から避けることも、受け止めることも難しい。
そう両者は考えていたが。
サソリの左手がまるで軌道が分かるかのように淀みなく動きあがり、鉄パイプを受け止めた。
「!?」
これにはサソリも自分の身に起こった違和感に頭を捻った。鉄パイプを持って殴ってくる軌跡と腕に伝わる感触が全て物理的に一致していた。曲がるはずの不良の男の周囲が曲がって見えなかった。
「!!?」
受け止められた不良の男に焦りの表情を見せ始める。
「どういうことか知らねえが、幻術が解けているようだ」
「このガキ!」
不良の男は、倒れているサソリの脇腹を蹴り上げた。そこにはナイフがあり、より深く、より捩じれてサソリの身体へと差し込まれる。
「がはっ!!」
サソリはゲホゲホと口から血を吐き出す。
再び、相当量の血がサソリの口から流れ出た。
ひとしきり、咳をするように血を吐き出すと邪魔物を排除するように口を拭う。
「ふぅー、すっきりしたぜ。さて……」
最後の血を吐き終わったらしく、サソリの血色は少し回復した。
サソリはキッと視線に力を込め始め、周囲に針のように突き刺さる殺気があふれ始める。
不良の男も普段の喧嘩でさえも出会ったことのない強烈な殺気に足を後退させた。
サソリの両眼の巴紋がクルクルと回転し始める。
鉄パイプを握りしめて、相手を一瞥すると徐々に立ち上がった。
違う……
コイツは普通じゃねー
今までに喧嘩してきたどの敵にも当てはまらない何かが……
サソリの凄ま
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