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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
第10話 眼
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いる暇はねえ」
不良が三階に移動すると、一番広い部屋で白井は窓際に立っていた。
この女を追い詰めればこっちの気分も晴れるものだ。脇腹を抑えて立っている女に向けて余裕の笑みをみせる。

あのガキはナイフで黙らせた。俺の能力は無敵だ。絶対に負けねえ!!

そう言い聞かせると
「冥土の土産に聴かせてやろう。俺の能力」
自分のペースを守るためのいいわけだ。
レベルアッパーで手に入れた能力の凄さ、すばらしさを
白井はチンピラの男の言葉を制するように俯きながら答えた。
「周囲の光を捻じ曲げる能力ですわね……」
能力、偏光能力(トリックアート)
誤った場所で焦点を結ばせて、距離感を狂わす能力。
「ああ、そうだそこまで辿りついたことをほめてやろう」
最悪の相性だった。
白井は自分の抱いた仮設の裏付けにため息をついた。

仕方ありませんわね……
相手に当てられないなら、いっそのこと相手に当てませんよ
すでに固定されているものを使わせてもらいますわ

白井は窓に手を掛ける。
テレポートの能力としてあるのは、空間移動であるがこの時に移動させる対象と移動した先にある物体について
「移動する物体」が「移動先の物体」を押し退けて転移する特性があった。
たとえ、硬度に開きがあったとしても
ダイヤモンドを紙で切断することも容易である。
白井は逃げ回っていたのではなく、この廃ビルを支えている柱に注目し、計算するために座標情報を頭に叩き込んでいた。
コンクリートの柱を窓ガラスで切断する。
常人では考えつかないような案を出して、この場を収めようと演算を始めるが

「そういや、さっき……変な赤い髪のガキがオレにたてついたから、ナイフで刺して下の階で寝てるぜ」
という一言に白井の動きは止まった。

えっ!!?
誰かいますの……?

これからこのビルを崩壊させるのに人質を取られた気分だ。
白井の額に冷たい汗が流れていた。
予想外の状態に打開策が崩される。

先に窓を移動させて、崩れる直前に自分は階下にいる人を救出
いや、ダメだ。
二階にいるのか一階にいるのか分からない
三階の柱を切断して、救出するには時間が足らない

動きが止まった白井にニヤニヤと不良の男がジリジリと窓際へとにじり寄った。

一体、どうすれば良いですの?
市民の安全を守るはずのジャッジメントが危険に晒してしまっていることに、自分の弱さが出てしまっている
白井は悔しさから下唇を噛みしめた。

すると、廊下の視界外からガラガラと何かを引きずる音が徐々に二人の部屋に近づいてきている。
エタイの知れない緊張感に二人は身を固くした。
廊下への出入り口からひょっこり顔を出したのは、口から一筋の血を流している、顔面蒼白のサソリだった。
外套
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