40.オープン・コンバット
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何だよオイオイオイオイオイ!誰かと思ったらポンコツ鎧かよっ!何だかねぇこの人形に話しかけてたことに気付いたかのような言い知れない虚しさ!この空虚感をどうしてくれんだよ糞鎧がぁッ!!」
『執行猶予付き斬首』
図らずとも、鎧が姿を現したことであの厄介極まりなさそうなローブマンはベルの存在を鎧と勘違いしたらしい。つまり、この瞬間だけならベルはノーマークである筈。その考えに瞬時に思い至ったベルは、建物の窓際や街灯などに次々に手足を引っかけてヤモリの如く駆け上がる。
が、焦った所為か足の固定が甘く、つま先が滑った。
「おひゅっ!?」
奇妙過ぎる悲鳴にしまったッ!と顔を真っ青にする。変な声で自分の存在がバレたらせっかく存在を悟られずに動いていた努力がパァだ。だが、心配は杞憂に終わった。
『パパパッパパッパパパパパパパッッッパパパ、パゥワアァァァアアアアアアッ!!!』
『一緒に死のう!どんな死に方がいい!?練炭!?首吊り?串刺し!?ギロチン!?それとも熱で溶かした黄金を口から流し込んで君も愉快な黄金像ぉぉぉーーーーッ!!!』
「サンドバックが2体追加ぁぁぁぁッ!丁度いい、戦闘サンプルとして俺様が有意義に使ってやるぜぇぇぇッ!?」
とんでもない奇声をあげる2体の鎧が悲鳴とほぼ同時に通路に突入してきたのが足元に見える。その声にかき消され、ベルの悲鳴は気付かれなかったらしい。ほっと一息ついたベルは、勢いよく屋根の上に登りきる。これで一度安全だ。
しかし――とベルは思う。
「待てよ……あのヘンな鎧を三体も同時に相手してあの人大丈夫なのかな?」
心にゆとりが生まれた時、人は余計な事を考える。先ほどまであれほど警戒していた相手にそのような感情を抱いてしまう彼は、きっとそういう人物なのだろう。そのまま素直に通り過ぎていればよかったものを、ベルはどうしても気になってか屋根の上からこっそり下の様子を垣間見た。
そして――絶句した。
「ん〜〜ん……首筋の筋肉を震わす心地よい振動だ。これはトータルステイタスで筋力800……820……824って所かぁ?雑兵の類にしちゃあそこそこの馬力だなぁ。動きが素人なのが気になるが、どうでもいいか?」
上機嫌そうにゴキゴキと首を鳴らしながら男がにたぁ、と嗤う。
鎧の手に握られた斧が、剣が、槍が――光の壁に激突して停止していた。
「次は耐久力のテストだっ!!俺様を長く楽しませる為にもあっさりクラッシュしてくれるなよぉ?――『反転』ッ!!」
男が左手を光の壁に叩きつけた瞬間、突如として三体の鎧が同時に吹き飛ばされる。けたたましい音を上げて壁や地面に激突しながら無様に転がる鎧たちを見ながら、男はローブのフードで隠していた顔を晒した。
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