40.オープン・コンバット
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いるかと思えば全身を仰け反らせて喜色を露わにする挙動不審な男性に、ベルはものすごーく困った。ベルの記憶が正しければこちらの路地のルートを通り、かつ大通りを避けるにはあの超絶不審者のいる一本道を通らなければならなかった筈だ。
今から引き返すのでは間に合わない。かといってあそこを通って絡まれでもしたら、逆に誰かに助けてもらわなければいけなくなってしまう。散々迷った挙句、ベルは一つの方法を思いつく。
(道がないなら「上の道」を行くしかないかな。最後に木登りをやったのっていつだったっけ……)
建物を上って屋根の上を行く移動方法……『移動遊戯』。やったことはないが、この辺の建物は屋根が平らだからやろうと思えば出来ない事はない筈だ。手足の欠けられそうな場所におおよその目星をつけたベルは「よしっ」と呟いて昇ろうとし――
「でぇぇぇ?そこの曲がり角でコソコソコソコソしてるのはどこのどちら様かなぁ?お兄さんは優しいので今出てくれば7割殺しで済ませてあげるよぉ?」
(バレてたぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!?)
どわっと背中に冷や汗が噴き出た。
7割殺しってほぼ死んでるんじゃないですかね……などと場違いな事を考えて現実逃避をしてもいいのだが、ベル少年は痛い事はものすごく苦手素人冒険者。回避だけならそこそこ自信があるものの、あからさまに危なそうな男に無警戒に接近する気は全く起きない。
それに――先ほどからあの男を見ていると、巨大な蟲に睨まれているかのような背筋をなぞる不快感を感じる。あれに近づくことを、ベルの本能が完全に忌避していた。
(うう……お願いだから僕の事には構わず通り過ぎて……ッ!!)
「おいおいおいおいおいおいお〜い!時間稼ぎですかね〜?考えてるね〜?自分が痛い目に遭うかどうかとかァ?この人見逃してくんないかなぁとかァ?或いは今から引き返せば逃げられるかもしれないとかァ!!どぉなんだオラ言ってみろやぁッ!!」
瞬間、ベルの鼻先すれすれを『何か』が掠め――ベルの横の『何か』にカコンッ、と子気味の良い音を立てて命中した。
(…………えっ?)
この時、ベルは建物の角を挟んだ位置からほぼ直角に正体不明の何かが飛来したことにも勿論驚いた。しかしそれ以上に驚いたのが――自分の真横に、いつのまにか見上げる程大きな鎧が音もなく佇んでいたことだ。
声も出ないほど驚いたベルは、全身の産毛が真上に逆立つような錯覚を覚える。
『……………………』
「……………………」
鎧はゆっくりと手を上げ、ベルを人差し指で差し、一言。
『執行猶予付き』
(何がっ!?)
それだけ告げた鎧は、突如として手斧を持ったままベルの横をすり抜けて通路へと侵入していく。
『執行猶予付き死刑』
「あァん?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ