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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
39.『免疫細胞』
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全て真正面から打ち砕いて惨めな思いをさせるタイプらしい。デキるけどモテない女の典型だ。行き遅れてしまえ、と内心でぼやいた瞬間にもう一度台車が揺れて再び頭を打った。

「正解は、人の体の中に余計なものを叩きのめして外へ追い出す機能……『免疫』が存在するからだ。風邪ってのはその免疫が不完全な時に起きる。だから――もしもオラリオそのものを単一の生命体だとみなすならば、その『免疫』とは何だ」
「何だって……オラリオに入る邪魔者を実力で排除する連中……あっ、冒険者!!」
「そういうことだ。さぁ、そろそろ動き出すぞ?」

 世界でも類を見ないほどに狂暴凶悪な戦闘集団――このオラリオには、冒険者という名の免疫細胞に溢れている。



 同刻――とある屋根の上。

「おいおい何だアレ!家がどんどん壊れてるんですけどぉ!?」
「やろー舐めたマネしやがって!俺達『移動遊戯者(パルクーラー)』の遊び場をぶっ壊すんじゃねぇ!!」
「武器持ってきなさい!あのデカブツ、どうにかして止めるわよ!!」
「暇な冒険者かき集めて来い!!戦争だオラァーーーッ!!」



 同刻――バベル付近。

「おっかしぃなぁ……この辺までオーネストの臭いがしたんだけど」
「あら?てぃおなはんやないの……こげん所に一人でどないしたん?」
「あれ、浄蓮?珍しいねーこんな時間帯にウロついてるなんて」
「ちょっと野暮用があってなぁ……ほら、あっちにおるごっつい鎧のオバケみたいなんを片づけんとあかんのよ」
「あっち?……何アレでっかぁぁぁぁーーーーッ!?」
「いや、あんだけ派手に暴れてるんによう気付かんかったね……オーネストはんに夢中になりすぎちゃいます?」



 同刻――ヘスティア・ファミリア付近。

「……ど、どうしよう。師匠はまだ来てないけど、あんな鎧の集団が街を襲ってるなんて……どうする?どうする僕!?」

 白髪赤目の少年はしばしの間狼狽えていたが、直ぐに衝撃の事実に気付く。

「っていうか、アレ?あの鎧の進んでる方向って神様がバイトしてる屋台の……ということは神様が危ないいいいいいいいいいいいいいッ!!?」

 少年の足は、考えるより先に動き始めていた。



 街に突如出現した巨大な敵と撒き散らされる被害に気付いた街の戦士たちは、既に各々で動き始めていた。まるで統一された意識の元に異物を排除するように、同時多発的に、一斉に。

 ここは神々の街、オラリオ――世界一勇猛で命知らずな戦士たちの集う街。
 
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