39.『免疫細胞』
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「ノンキ言って見物決め込んでる場合ッスかぁぁぁーーーーーッ!!」
その辺に放置されていた市場の二輪車に詰めて運ばれながら、ルスケはどこかのんびりしたブラスに全力でツッコんだ。
がらがらとし石畳の上を走る振動の不快さもさることながら、この二輪車はジャガイモか何かを運んだものなのか猛烈に土臭い。しかしもう走れないくらいに消耗しきったルスケはこの二輪車で気絶したモルドを抱えたまま運ばれることしか出来なかった。
「あいつ!街をブチ壊しながら兵隊引き連れて移動中なんッスよ!?このままだと犠牲者が出るッス!!俺達の事はいいからアンタどうにかして止めに行ってくださいよッ!!」
「俺の任務はお前の護衛と殺人事件の解決。あの大鎧どもを止める権利も義務もありはしない。なまじあったとしても、優先順位は2番か3番だ。心配せずともあいつが通っているルートは出稼ぎ連中の宿舎が立ち並ぶ場所だからよっぽど運の悪い奴がいないかぎり死人は出ない」
「いやいやよしんばそうだとしてもッ!!このままだとアイツ止まらないッスよ!?冒険者ステイタスに加えて『不壊属性』なんッスから、そんじょそこらの冒険者じゃ勝てないっしょ!?」
「勝てないなら逃げるだろう。冒険者ってのはそういう奴が生き残る」
「ホント冷徹ッスね!!あんた心が鉄で出来てるんじゃないッスか!?」
「心などという不確かな存在に根拠を求めるな、甘ったれが」
皮肉のつもりが何故か罵倒された。鉄どころかオリハルコン製なんじゃないだろうか。
「とはいえ……貧民街の方に向かっているのはマズイな。あの辺りはあれで人口密集地だ。既に避難は始まっているだろうが、あのデカブツが来るまでに間に合うかどうか……」
「他人事みたいに!俺達の街なんだからアンタも守ってくださいよ!」
「ぐちぐちと喧しい」
「ごわぁっ!?」
ガタン!と二輪車を揺さぶられたルスケは後ろ頭をぶつけて悶絶する。
「お前、何で人間が風邪をひくか知ってるか?」
「はぁっ?ンなもん……アレだろ。夜に寝てるときに毛布でも蹴飛ばしたせいで体調が悪くなるんだろ?」
「不正解だ。実際には菌やバクテリア、ウィルスが……お前にも理解できるように言えば『目に見えないくらい小さな生物』が体内に侵入することで発生する」
「なんかお前知能低いだろって言わんばかりの扱いを受けた気がするッスけど……理解は出来たッス」
「そこで質問だ。実はこの『小さな生物』は世界のそこらじゅうに住んでる。この台車にも、お前の口の中にもいる。なのにお前は今風邪をひいていない。それは何故だと思う?」
「……答えが出なくたって俺達は生きていける、それが答えッス」
「知らないなら知らないと言え。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ」
この女は男の意地っ張りというものを
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