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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
39.『免疫細胞』
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人により何かが入っていると探知できる。だが、その物質に宿ってしまったその場合のみ、完全な隠匿性を得られるのだ。分かるか?お前は最初から最後まで、僕にずっと監視されていたんだよ。

 兜の頭を動かして周囲を確認する。動かすたびに頭部内に設置した鐘が喧しくガラガラと鳴り響くが、気にする事でもない。

『バベルがあっちか。向こうにガネーシャ像が見えると言う事は、あいつがいるのはダイダロス通りの方角だな………聞け、僕の兵隊たち!!』

 自分の分身たちに強く念じ、君主からの絶対命令を伝える。
 最早魂だけの存在となった僕たちの魂は互いに深層意識下で繋がり、共振されている。それを利用すれば、最も大きな魂から小さな魂へ自分の行動思想をそのまま転送することが出来る。これまでに無理をして魔法を行使し続けて発見した僕の研究成果だ。

 そして、僕はその研究成果を以てして最後の戦いに挑む。

『最後に殺さなければならない男を感じよ!奴の存在を感じるだろう!!……奴を殺せッ!!僕の共犯者を、必ず!!たとえこの世から消滅して地獄の淵に落とされるとてこれだけはやらぬわけにはまかりならんッ!!殺せッ!!それが僕がこの世界にいた最後の痕跡……ピオに対する最後の贖いッ!!』

 ピオ――。

 君があの時に僕たちと出会わなければ、今でも君は牡丹の花のように可憐な微笑みを浮かべていたのだろうか。今頃はレベルが5とか6とか、そんな『勇者(ブレイバー)』にも並ぶような戦士になっていたんだろうか。

 僕たちは、そんな君から未来を奪ってしまった。

 でも、君と出会わなかった未来なんて僕たちは考えたくない。一緒に街を遊んで回ったり、時には共に冒険に出たり。君は優しくて、可愛らしくて、時々おっとりで、たまにドジで、それでも尚美しくて――僕たちにとっては美の女神フレイヤよりもよほど魅力的な女だった。

 ピオ、親友だった。いや、親友以上だった。愛してるなんて安っぽい表現じゃ言い表せないほどに僕たちは彼女にぞっこんだった。君が死んだと聞いた時、僕は怒りでも悲しみでもなく、底なしの奈落に身を落としたような喪失感を味わい続けた。それはウィリスもだと信じていた。

 あいつら8人のせいでピオが死んだのだと思う事はあった。
 だが違う。今でもその思いは切り捨てることが出来ないが、それだけではないのだ。
 僕たちは――僕たち『10人』で贖わなければならない。

『まさか今更一人だけ助かろうなんて醜い事は考えないよねぇッ!?僕も、君も、裁かれるべき過去の罪なんだよ!!あの世で共にわび続けようよぉ……ウィリスぅぅぅぅぅぅーーーーーッ!!』



 = =



「無理心中ってのは勿論迷惑だが、心中の為に他の人間を巻き込むってのは更に迷惑な話だな」

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