39.『免疫細胞』
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に鎧が動き出していたということは、動かす準備はとっくに出来ていた訳だ。だとするとおかしいな……あれほど長ったらしい詠唱をする必要がどこにあった?アストラル体を押し込む際の精度の念押しか?)
鎧を動かした理由は、おそらく彼がこちらの妨害とは関係なしに予めそうする計画だったのだろう。アルガードはこちらの存在に気付いている様子はなかったし、彼自身がこう告げていた。
――百合の花を散らせた罪人の数と死んだ人間の数がまだ合わない。
――僕にはもう一人、この手で殺さなければいけない存在がいるんだよ。
(工房の方向転換に同意した主神ウルカグアリ……工房から去った旧友ウィリス……或いは例の『共犯者』か?ともかく、そいつを倒すためにあの鎧どもの細工を用意したと考えるべきだろう)
しかし解せない。話が正しければ計画は一か月前から始まり、魔法を覚えてからもそれなりの時間があった風に感じられた。ならばあんな理性が半分飛んだような不完全品では最後のターゲットを確実に殺せるのか怪しいものだ。
平時に発動させればモルドは確実に死ぬだろうが、彼の陶酔ぶりから考えればそんな大がかりな仕掛けをせずとも殺すのは容易いだろう。
(ならば、統率する存在でもいるのか?より大量のアストラル体を蓄えられる器があれば或いは出来るかもしれないが……あの屋敷にそんな代物が――)
あの工房の玄関。
超特大、前代未聞の推定6,7Mクラス。
(そんな、物が…………)
作、『人形師』ヴェルトールと事実上の合作である鋼鉄の兵。
存在そのものが全く実用性皆無なのに、無駄に洗練された無駄のない無駄な造形美。
ブラスは猛烈な頭痛と共に、万感の想いをこめて叫んだ。
「……盛大にあるじゃねえかぁぁぁぁぁぁーーーーーッ!!!」
直後、アルガードの工房があった付近から盛大な土煙と轟音を響かせて鋼鉄の巨人が体を起こした。
太陽の光を大きく反射する眩い銀色の四肢がゆっくりと動き、その指がぎちぎちと音を立てて動き出す。
『ふクくっ……クははっはっはっはぁ……誰もッ!!誰も僕を止められない!止められないんだぁぁああああああああああアハハハハハハハハハハッ!!!』
空白の筈の兜の隙間から人魂のような光を漏らすそれは、街中に響き渡る特大の少年の声でビリビリと大地を揺らした。曲がっていた膝が伸びたことで全高7Mオーバーになった巨大な鎧――余りにも出鱈目な光景に、轟音に気付いた周辺住民さえも唖然となる。
『悪霊の軍団』の主が、神々の街に降臨した瞬間だった。
考えれば――鎧たちはアルガードの私室からずらりと並んで玄関近くまで列をなしていた。つまり、魔法で鎧たちに魂を転送したわけではなく、実際にはあそこから玄関の巨大な
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