39.『免疫細胞』
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、二度と……ああしから『女』を奪い、ああしの男までもを奪った仇を……幾千の夜が過ぎ去ろうが、この記憶だけは消させる訳にはゆきまへん」
静かに脱いだ着物を着こみ、改めて主神へと向かい合う。
「で、何の用でありましょうか?」
「……街の北西より強い『呪』の気配を感じます。いつものように確認して――それが世を乱すよどみであるならば切除してきて貰えますか?」
「その命、謹んでお受けいたします」
懐から手袋を取り出して、手に装着する。いや、他人はこれを手袋だとは思えまい。掌の表と指先以外には殆ど布が無く、本来護る筈の手の甲などはほぼ剥き出しになっているのだから。指先だけは琴爪によく似た角が鋭く伸びているこれは、自分専用の武器だ。
何もこの街の秩序を守っているのはギルドだけではない。かつてはアストレア・ファミリアがあったように、自律的にこの街の秩序を維持する存在は昔からオラリオに存在する。そして、オシラガミ・ファミリアのクニツ・浄蓮もまた――そんな秩序を裏で支える冒険者の一人だった。
= =
追いかけっこは長く続かなかった。
意識がないモルドとそれを抱えたまま走るブラス、そしてもとより体力がそれほどないルスケ。こんなメンツで無限のスタミナがある『悪霊の軍団』の集団から逃げおおせるなど到底不可能だ。時折ブラスが通路にあった木箱や樽を蹴飛ばして鎧たちをひっかけたり試みるが、碌に効果が現れない。
おまけに攻撃に転じようにもブラスが荷物を抱えたままで、しかも相手が破壊不能と来れば全く有効な対策が取れない。
「ルスケ、お前あとどれくらい走れる?」
「ぜぇーッ!はぁーッ!あっ、あとっ、3分ぐらいぃっ!!うぐぉっ、わ、脇腹が……ッ!!」
「情けない男だ」
「うっさいわ!!そんな大荷物抱えて顔色一つ変えずに走る冒険者のアンタがおかしいんッスよッ!!」
既にルスケは限界の一歩手前だ。全速力で走り続けて既に数分。デスクワークに特化した彼の身体は関節や筋肉が次々に悲鳴を上げ、全身から脂汗やら冷や汗やらが噴き出ている。
それに、長期間意識がないまま揺さぶられ続けているモルドもよろしい状況とは言えない。無抵抗な彼の身体は人間が反射的に行うような自衛行動を一切取れないので、既に彼の身体には潜在的なダメージが蓄積し始めている筈だ。
ブラスは思案を巡らせる。
凌ぐだけならルスケとモルドを狭い路地にでも押し込み、そのまま鎧を彼らの元に辿り着かせないように自分が肉壁となりつつ戦うのが安全策だろう。今はとにかくこの二人の安全を確保するのが優先だ。
(突入タイミングをしくじった。パラベラムが遠ざかるのを待たずに素早く捕縛するべきだったか……いや、詠唱開始時に既
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