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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
38.悪霊の軍団
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た『情報』……!」
「あの、ブラスさん!!連中ただの鎧にしては足が速すぎないッスかぁ!?」
「この予想は当たっていて欲しくないが……魂の情報と同時にアルガードのステイタスまで受け継いでるのかもしれん!!」
「もう何もかも出鱈目だぁッ!!」

 次々と見に降りかかる不幸にルスケが天を仰いで叫ぶ。
 アルガードも小人族の職人とはいえもう20年以上冒険者をやっているのだ。ギルドの登録ではレベル1となっているが、『神秘』のアビリティがある時点で明らかにレベル2かそれ以上だと考えるのが妥当だろう。つまり、税金対策でレベルをサバ読みしている可能性が高い。

 スタミナが半無限で、しかも一体一体が最低でもレベル2の冒険者並みの身体能力。こんなものがあれば一人でちょっとした軍隊を作ることさえ可能だろう。しかし、それとは別にブラスには一つの疑念があった。

(これだけの術を行使した術者(アルガード)は、果たして無事でいられるのか……?)

 自分自身の魂を情報として出力するだけで脳には果てしない負担がかかるはずだ。余りのストレスに人格や性格に異常を来たしてもおかしくはない。それを、何のためにかは測りかねるがこんな使用法をすれば――いや、それは護衛対象を安全な場所に移動させてからにしよう、とブラスは考え直す。

『生贄が足りないのです!?か!なララ貴方のためメメに荒侘なイきぇニ嬰のそっ首かげげげげげげgrrcsユーの生き血をサクリファイス!!』
「くそが、護衛対象がいるんじゃ無理は出来んか……!」

 鎧の中でも最も小さな個体が2M近くある槍を掲げて凄まじい速度で突っ込んでくる。
 ちっ、と舌打ちしたブラスは剣を抜いて距離を取りながら考える。力づくで強引に吹き飛ばして後ろの鎧たちに衝突させたいが、それをやるには抱えているモルドが邪魔だった。

「ガラではないが、切り裂く!」

 槍も鎧も上物ではあるが、切り裂くことだけに集中すれば斬るのは難しくはない。それに、こちらの剣はオリハルコンを惜しげなく使ったヘファイストスの最上級品。対してあちらの槍は精々が鋼製。素材的にも斬れないことはない。

「ふッ!!」

 微かに速度を落として槍の鎧に近づき、瞬時に居合のような瞬撃を槍に叩きこむ。
 ブラスの刃は吸い込まれるように槍へと飛び――


 直後、凄まじい手応えと共に刃が弾かれた。


「な……!?」
『ドワーフは死ね!ドワーフは生きる価値なし!ドワーフは穢れた一族!ドワーフは死刑か奴隷!!』

 鎧は何事もなかったように狂気を感じる叫び声を上げながら槍を振り回す。何故自分の斬撃がああもあっさり弾かれたのか――あの『異常なまでの手応え』は何か。瞬時に考えを巡らせたブラスは、まさか、と逼迫(ひっぱく)した声を漏らす。
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