38.悪霊の軍団
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がある。まるで今では完全にブラスと同じ結論に到っているかのようだった。ブラスの目線に気付いてか、ルスケはうんざりするように頭を振る。
(悔しいけど、これまでのアンタの行動には無駄が無かった。なら、モルドさんを気絶させたのは逮捕の妨げになるから。だから容赦なく最も効率的な方法を取った……つまりそういうことなんッスよね?)
(そうだ。それに、こちらで話がこじれると中のパラベラムに飛び火しかねない)
別に死人が出たからどうだと言う訳ではないが、助けるにせよ助けないにせよ手間は大して変わらない。ならば態々得る物の少ない選択をする必要もないだろう。ルスケもその言葉に感銘したりはしなかった。今のブラスの眼にはパラベラムの命を助けようなどという使命感や熱が全く籠っていない。そこに人道的な思いやりという物は存在しない。考えているのは数値的な目標達成へと至る筋道だけだ。
(アンタ、犠牲さえ出さなきゃ何でもやっていいって思ってるっしょ)
(ああ)
(だと思った……人間の情を逆なでする癖に、情と実情を天秤にかけるのがお上手だ。合理主義って奴ッスか?美人なら許されるって言う奴はたまにいますけど、俺はアンタが嫌いッス)
(それでいい。俺なんかに惚れたら奴はお気の毒だ)
(そりゃ皮肉ッスか?実体験ッスか?そーいう遠回しに物事をぼかす所も嫌いッス)
(そうか)
会話を続ける気が無いと言わんばかりに淡白な返答をされたルスケは、顔を顰めながらもモルドを廊下の向こう側へ抱えて行って寝かせた。おそらくあと数十分は目を覚まさないであろう彼に微かな憐憫を抱く。同時に、その憐憫がどれほど傲慢であるかにも。
何故なら、これから起こることがモルドを傷付けると分かっていても決して止まる気が無いから。例え彼がどれほど強い想いで止めようとしても、罪人は必ず連行する。彼はその事実に深く悲しむだろう。ルスケはそれを憐れんでいるのだ。
自ら作り出した悲しみに苦しむ人を、元凶の自分が憐れむ。
悪いのは犯罪者だと理解はしていても、それを傲慢と思わずにはいられない。
(実情がどうであろうが悪人は悪人。親しい人がしょっ引かれたらお気の毒。秩序の為なら致し方なし、ね………この人の前で同じコト言えるほど無神経にはなれねぇッスよ、俺は)
資料の上で発生している物事などこの世には存在しない。
「百聞」を圧倒的に上回った「一見」という現実に、ルスケは静かに打ちひしがれた。
= =
計画は簡単なものだった。尤もらしい甘言で愚図な8人を騙すだけだ。
あの事件は連中にとってはさぞ忌まわしい汚点だったのだろう。仔細は奴に任せていたから知る由もないが、新聞を見れば不審死の知らせと被害者の名前くらいは分かる。奴は上手くやった。僕もまた、上
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