37.忠
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先輩方……!そりゃそうだ。犯罪者にだって近しい人がいるだろうよ。だとすればあちら側にとって悪い奴は秩序の体現者である俺達ギルドかよ……!俺達はそれを分かってて、それでもしょっ引かなきゃならないって訳ッスか………!!)
腹の底がきりりと痛む。これは人を騙す痛みか、それとも自分が真実を見たくないが故の痛みなのか。経験したことのない、背筋に抜身の刃が添えられているような緊張感が体に広がる。
もう、どんな些細な切っ掛けで彼の幸せが崩れるのか予測もつかない。
彼は砂上の楼閣の上でいつも通り幸せな日常を歩んでいるのだ。
せめてアルガードよ、犯人であることなかれ。
せめてきっかけよ、一秒でも遅れて来い。
まるで子供がやりたくない仕事を忘れたいがために遊びだすかのように、ルスケは無事平穏に事が運ぶことだけを考え続けた。
だが、得てして人の願いとは儚いもので。
「――む」
ブラスの元に、一匹の犬が走ってきた。ペンの挟まれたメモ帳のエムブレムが描かれた犬用ハーネスを身に着けた犬は、工房の出入り口に止まってすんすんと鼻を鳴らしていた。
「え、なにコイツ……」
「『新聞連合』の伝書犬だな。身内に緊急連絡するときに使われるが……失礼」
ブラスは勝手に犬のハーネスに備え付けられたポーチを開いて中の紙を取り出す。犬は一瞬ピクリと反応したが、ブラスの手の匂いを嗅ぐと何事もなかったかのように身を許した。今日初めて『新聞連合』に行った筈の彼女から何の匂いを嗅ぎ取ったのかは不明だが、連絡内容を読まれても問題なしと判断したようだ。
「………『本部よりパラべラムへ。時間かかりすぎだアホ新人め。とっとと任務を終えて撤退しないとみんなで押しかけちゃうぞ?』………おいモルド」
「なんでしょうか?」
「今、アルガードに客が来ていると言っていたな……誰だ?」
「パラベラム様です。新聞の集金にやってきた所、アルガード様が直接お払いになるとおっしゃったので自室にお通ししています。もう一時間ほど話し込んでおられますね……アルガード様はご趣味の事となると非常に多弁になられるのです」
ブラスは眉を顰める。モルドからすれば何度も見た光景なので気にしていないのだろうが、『新聞連合』は暇な組織ではないことを彼女はよく知っている。新人一人とっても仕事一つに対して割り当て時間が決まっているため、同じ場所に1時間も留まることなどない。『時は金なり』……『新聞連合』の鉄の規則。
という事は、現在パラべラムという新人はこの鉄の規則を破っているか、或いは――アルガードによって『どうにかされた』のか。
「悪いが強制的に引き剥がした方が良さそうだ。このままだと早ければ10分ほどで『新聞連合』の連中が駆けつけるぞ。文面は新人いびりにも見えるが、
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