37.忠
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――待てよ。
頭の中でパズルのピースが組み上がっていく。
その客はその一週間後にも訪れ、更には8日前にも現れたという。約一週間前……連続殺人事件が始まった時より少し前だ。そして彼の様子の変化に、ブラスの口にした『復讐のきっかけ』と『犯人とは誰か』というワード。
来客者が『きっかけ』でアルガードの様子は変わった。
来客者が最後に訪れた日の翌日に事件が起きた。
それに、イメージする犯人。
犯人と言っても殺人を行った当人だけが犯人とは限らない。殺人の手助けをした人間や、殺人を指示した人間がいたとしたら、それらも殺人者と同等に罪深い存在と言えるだろう。つまり、『きっかけ』とは誰かが運んできた『動機』で、それを受け取ったからアルガードの様子がおかしくなったのだとしたら――その場合、犯人は一人とは限らないのではないか。
(……来客者がアルガードさんに何かを吹き込んで、今回の事件を手助けした?)
恐る恐る口にした言葉に、ブラスは小さく鼻を鳴らした。
(やればできるじゃないか。だが理解するのが遅すぎだ。百点満点で三十点だな。)
(赤点じゃないッスか……)
「あの……お二方とも何があったのかは存じませんが、喧嘩をしている訳ではないのですよね……?」
「ああ、話を勝手に切って済まなかったな。実は俺達がアルガードに聞きたい事の内容に、その来客者が関係しているかもしれないと話し合ってたんだ。なぁ、ルスケ」
「あっ、そ、そうッス!いやー仕事熱心が過ぎるのも考え物ッスね〜!」
華麗にNGワードを躱して『嘘ではない』言葉をつらつら並べるブラスに慌てて合わせながら、ルスケは内心で揺れていた。確かにブラスの主張には筋が通っているが、確証になるような事実は何一つとしてない。彼女の推理はもしかしたら悪人でもない存在を勝手に悪人に仕立て上げるような拙い代物であるとも考えられる。
しかし、彼女の言葉を聞けば聞くほどにルスケはアルガードがやはり犯行に加担するような真似をしていたのではないかと思えてくる。もしそれが本当で、アルガードを拘束することになったら、目の前の使用人はいったい自分をどう思うのだろう。自分たちが彼の敬愛する主を疑っていることを知ったら、果たしてそれでも彼は明るく返事をしてくれるだろうか。
(俺はギルドの人間としてそれを暴かなきゃならない……例えそれを強く望まない人がいたとしても。その事実が、こんなにもキッツイ代物だったなんて………)
これまで様々な冒険者の担当を任され、何人も死亡報告を受け取ってきた。最初は悲しかったが、すぐ慣れた。今では「こいつは死ぬな」と雰囲気で勝手に推測することさえある。だからギルドの仕事の辛さなどもう理解した気でいた。
(クソッ、こんなキッツイ事を人に任せて、恨むッスよ
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