37.忠
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人が訪ねてくるのは珍しいことでした。3度とも同じお客様で、30日前に一度、25日前に一度、そして8日前に一度訪れましたね……アルガード様曰く、同じ小人族のご友人だとおっしゃっていました。恐らく仕事を頼まれに来たのでしょう」
「そいつだ」
「は?」
「あの……一体何をおっしゃっているのですか?」
会話のキャッチボールが上手く行われていない。ブラスがえらく口下手だとは思っていたが、事ここに到ってルスケは彼女が一体何を言っているのか、何を考えているのかがさっぱり分からなくなってきた。突然のことにモルドも面喰っている。
いや、それとも彼女は自分の直感が外れたことを認め切れずに支離滅裂な事を考えているのだろうか。……あり得なくはない。彼女は自分の判断に絶対的な自信を持っている様子だった。プライドのせいで認められないこともあるだろう。
「その客人の名前、やってきた目的、そいつが訪ねてきた後のアルガードの様子が知りたい。恐らくそいつがアルガードを――」
「おいブラスさんよぉ!ちょっと落ち着くッス!」
なおも詰問を続けるブラスの強引な態度を一旦抑えるべきだと考えたルスケはブラスの言葉を遮った。
「……何だ、ルスケ」
(それはこっちの台詞ッスよ!)
ブラスは思いっきり面倒喰う誘うな面をしながらも、一応こちらに耳を貸してくれた。
モルドに聞こえないよう小さな声でブラスをなだめる。
(さっきまで冷静沈着だった癖に何を急に焦っているんッスか?アルガードさんを疑ってんのは分かってますけど、本当にアルガードさんが犯人かなんて確かめないと分かんないっしょ?誰にだって間違いはあるッス!)
(………何を勘違いしてるのかは知らんが、ひとつ聞いておく。お前の言う犯人ってのは誰だ?)
(誰って……それが分かったら苦労しないッスけど?)
(言い方を変える。お前、これまで普通に過ごしてきたような職人がある時突然20年前の復讐などという三文芝居のようなことをやると思うか?俺はそうは思わない……何か強烈な『きっかけ』が無い限りはな)
(きっかけ………?)
(自分できっちり考えろ。アルガードの様子がおかしくなった頃に何があった?)
アルガードの様子がおかしくなったというのは、先ほどモルドの言っていた「元気がない」という話だろう。その頃に何があったかなどルスケは知らない。だが、ふと引っかかるワードがあった。
確か彼の元気がなくなったのは一か月前。
そして、見覚えのない来客があったのも、約一か月前。
とすると、アルガードはその来客と前後して急に元気がなくなったことになる。先ほど話を聞いていた限りではこの客がアルガードに依頼をしたと思われるため、彼の元気がない理由は作品作りに労力を割かれているせいだと推測できる。
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