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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
37.忠
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料を引いてくるし、機嫌次第では気遣っても酷い仕打ちを受けます。真面目な人は損をする……そうも思っていました」
「しかし、アルガードさんは貴方のそういう所を文字通り買ってくれたんスね……」
「ええ。ちょっと金銭感覚が狂ってるところはありますけど、あの人はとにかく仕事に対して誠実な人間がいればそれでよかったみたいです。私はそのお眼鏡に叶ったらしくて……」


 その日からモルドの生活は変わった。
 毎日真面目に掃除をして、アルガードの服を洗濯したり食事を用意する。簡単な仕事というわけでもなかったが、真面目にしていれば理不尽な目に遭う事はない。休憩時間も十分取れる。なによりアルガードはモルドの仕事が行き届いていることを子供のように喜んでくれた。評価されないような自分の人格的な部分を、彼は目ざとく見つけては喜んだ。

『お前、本当に良い奴だな!ずっとこの工房で働いてくれよ!』

 その言葉がなにより嬉しかった。生まれてからずっと孤独で誰にもその存在を求められなかったモルドのことを、アルガードは労働力としてではなく人格として求めてくれた。

 この時、モルドは思った――体の持つ限り、ずっと彼のそばで働きたい、と。

「以来、不肖ながらこのモルドはずっと工房で働いているのでございます」
「なんか……俺、口下手なんで上手く言えないんッスけど、ずっと一緒にいられたらいいッスね」
「ええ、本当に……そうありたいものです」

 照れ臭そうに、しかしはっきりとした口調で返答するモルドの態度から、彼が本気でそう思っていることが分かる。傍から聞けば誇大な主張にも聞こえるが、彼の纏う誠実さがそれを逆に自然な反応に思わせた。
 ルスケの頭の中でアルガードという男のイメージが崩れていく。それまでは復讐の為に職人を続けた陰湿な存在という勝手な先入観があったが、モルドの語るアルガード像はもっと人間的で、少しひねくれてはいるが善良な人に思えてくる。

(……ブラスさん。本当にアルガードさんが犯人なんッスか?話を聞く限りではとてもそんな犯罪を犯すほどヤバい人には思えないッスよ)
(だから何だ)
(え……だから何だって言われても、その……ブラスさんの当ては外れたんじゃないかって……)

 ブラスはそれに答えずにモルドに質問した。

「最近、そのアルガードに変わった様子はなかったか。やたら作業時間が伸びたとか、急な来客があったとか」
「変わったことですか……そうですね。ここ一か月ほど、少し元気がないように思えます。時々アルガード様の元には無茶な製作依頼が来ることがありまして、きっと作業で疲れているのでしょう。最近もよく工房に籠っておられます」
「ちょっ、ブラスさ……」
「他には何か?」
「そうですね……そういえばお客様が3度ほど。工房に直接
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