37.忠
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非冒険者が安定した収入を得るのは簡単ではないため、詳しい仕事内容の分からない仕事であっても競争率は高い。
モルド自身生活に余裕がなかったために様々な仕事をしたが、ことファミリアの非冒険者求人は非常に待遇が悪い場合が多い。中にはファミリアの冒険者に仕事を邪魔されたり暴力を振るわれることもあったという。普通なら避けるべきなのだろうが、モルドは戦争孤児で身寄りがないため働かなければ貧民街の仲間入りだ。是非もなかった。
そうして出会ったのがアルガードという男だった。アルガードという冒険者は根っからの職人で作業台と結婚しているような男だったが、どうにも自分の近辺を整理したり掃除するのが苦手だったらしい。モルドが最初にやったのは工房内の大掃除だった。
『アルガード様、この腕輪は?』
『前の前の依頼の時に作った奴の出来損ないだ!捨てろ!』
『え、でもこのままでも売れそうなくらいには綺麗ですけど……』
『よく見ろ!輪の輪郭が0,004Mも歪んでるせいで光沢が美しくないだろ!そんな出来損ないを僕の作品として世に出すなんてありえんっ!!』
その辺の露店で売れば小金が稼げそうなものでも、アルガードが気に入らなければ全てガラクタ。そう言う失敗作は全部ファミリア経由でクズ鉄の再利用業者に流してしまうのだと彼は語った。職を探してオラリオに来た貧乏学生にとっては割と衝撃的な内容だった。そして、その日の手取り金も衝撃的だった。
『ふう、綺麗になった!それにしてもモルド、お前優秀だな!今までも何人か雇ってきたが、僕の作品を捨てるふりしてパクらなかったのはお前が初めてだ!これ、小遣い!』
『あ、ありがとうございま………うえぇぇッ!?こ、これ10万ヴァリスくらいありますよ!?こ、こんなに貰っていいんですか!?』
『お前は誠実だから、誠意に見合った対価を与えただけだ!その代り、これから僕に誠意のない対応をしたら給料は払ってやんないんだからなっ!!』
それだけ強調して言い残し、その日の仕事は終了した。
この時、モルドは衝撃を受けたという。彼の豪胆さにではなく、彼の人物評価にだ。
「――私の誠意にお金を出してくれるなんて………そんな人、今までいませんでした。非冒険者で孤児だった私はとにかく碌な職に就けたことがなく、働くと言うのは奴隷のように命令を聞き続けることなのだと思っていました……いや、お金を貰えるだけ奴隷よりはマシなのですが、とにかく………恥ずかしながら、ものすごく嬉しかったのですよ」
照れたように後ろ頭を掻くモルドは小さく笑う。
「それまでの私にとって、気遣いとか真面目さというのはやっても見返りが帰って来るものじゃあなかったです。労働者はみんな自分のことで精いっぱいだし、雇い主側はそういう気遣いとかを出来なかったら給
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