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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
37.忠
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のです」

 項垂れるルスケとは対照的に、モルドはくすくすと可笑しそうに笑った。

「ときどき威厳を気にして堅苦しい喋り方をしようとしては『疲れた』とぼやいて結局普通の喋り方になってしまったり、わがままを言っては私を困らせたり……子供っぽいお方です」
「まー見た目だけなら完全に子供ッスけど」
「本人には言わないでくださいね。ご自身がチビなの気にして厚底サンダル履いてますから」

 さらりと主の威厳を削ぐ情報をばらしていく従者というのも如何なものだろう。
 それにしても、文句を口にしてこそいるものの嫌そうな顔は一切しないのがブラスには気になった。たかが雇われの従業員、我儘な雇い主には嫌な顔の一つもするものだ。

「……面倒という割には随分嬉しそうに笑う。何故そんな面倒な奴に仕える?給料がいいからか?」
「いえいえ、そうではありませんよ。ただ単純にアルガード様のことをお慕いしているのです……ほら、玄関だって凄いでしょう?あの方は鎧が大好きなのです。子供っぽくて微笑ましいじゃないですか」
(あのサイズのオブジェを「微笑ましい」の一言で片づけるのはスケール的にも金額的にも無理があるような………)

 玄関の巨大鎧を見上げて冷や汗をかくルスケとは対照的に、モルドは子供の微笑ましさを語るように楽しそうだ。もしかしたら子供好きか、低確率で特殊な性癖なのかもしれない。子供を偏愛する余り一般人の小人族と結婚したヒューマンの貴族がいたという噂もあるくらいだから、あり得ないとは言えない。

(んー、本人に今すぐ会えないとなると……どうするッスか、ブラスさん?)
(嘘をついている感覚を覚えない以上は本当に誰かと喋っているんだろう。無難な対応としては素直に会えるまで待つことだな)
(嘘をついてる感覚ってアンタ……たまに神様みたいなこと言うッスね。人間が嘘をついてるのか判別がつくんッスか?)
(ある程度はな。完璧ではない………しかし、そうだな。この男に聞き込みでもしてみたらどうだ。アルガードの人となりが分かるかもしれん)

 どうせ本人以外にも聞き込みはすることになる。このモルドという男にも話を聞いておいて損はない。ブラスと二人きりで待つのも気まずいのでルスケは素直にアドバイスに従った。

「あの……モルドさん。俺達アルガードさんのことは資料でしか知らなくて……普段どんな人と接しているのかとか、依頼の事とか……当たり障りのない範囲で教えてもらえるッスか?」
「ええ、ええ!構いませんとも!!」
(目を輝かせてる……どんだけアルガードさんが大好きなんスかこの人……!?)

 モルドが言うには、そもそも彼は数か月前からここの召使いになったそうだ。
 ギルドのバイト求人で偶然発見したらしく、その時は特に深く考えず受けたそうだ。この街では
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