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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
36.『悪』の重さ
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をぶつけられて思わずたじろぐアズの姿はちょっぴり間が抜けていた。
 そして、今更になって自分とアズの距離が今までにないほど近かったことに気付かされ、レフィーヤは内心で驚いた。感情的になったことでいつの間にか距離を縮めていたらしい。喧嘩するほど仲がいい、という訳ではないが、互いの感情をぶつけあったことで思わぬ幸福を招いたようだ。

 ――結局、アズを怖がっていた理由は心のどこかで「アズは自分とは絶対的に違う」という思い込みだったのだろう。今では近くにいる事に何も違和感や恐怖を感じることはない。言葉を交わしたことで、アズが人間の当り前に抱えている「恩義」や「思いやり」を持っているのだと感じることが出来たのだから。

「――とりあえず、俺っち逮捕の線は消えたってことでいいんかね?」

 突然かかる第三者の声。気が付くと、小屋にもたれかかる一人の男がいた。歳はヒューマンにして40歳程度の男性だろうか。栗鼠(りす)特有の先端が丸まったひらべったい尻尾と小さな栗鼠耳が出ている。――余りこの街では見ることがないが、栗鼠人(エキュルイユ)のようだ。
 男はニヒルな笑みを浮かべて3人を向き、そしてレフィーヤに白い歯を見せてニカッと笑った。

「また会ったな、キュートガール?」
「え………失礼ですけど初対面ですよね?」
「ウップス……そうか、あの時は急いでたから俺っちの顔までは見てなかったってわけか……」

 あの時――急いでいた――それに、「キュートガール」なんて変な言葉づかい。その条件にあてはまる人間を探したレフィーヤは、遅ればせながらその人物とどこで出会ったのかをやっと思い出す。

「ま、まさか………事件現場で私にぶつかった不審者ッ!?」
「そうだ俺っちこそが現場の不審者………って違うわ!!客観的には違わないけど不審者じゃないわっ!!」
「ああ……まぁアレかな。改めて紹介しようか」

 アズは片手をその男に差し、さらっと事実を述べた。

「彼の名前はラッター・トスカニック。『ゴースト・ファミリア』が一番信用してる情報屋だよ。ブラスの口止めの真相はつまり、頼りになる情報屋を間違いで指名手配されたら面倒だったからってわけ。先を見越してのちょっとした伏札って訳だね」
「不審者扱いされたのは気に入らないが、まぁ……いつでも新鮮お得な情報より取り見取り!情報屋のラッターだ!これからもご贔屓に、ってね!」
「……………………」
「えっと………その、私にだけ話が見えないんですが?これって私がトロいのが悪いんですか?」

 つまり、情報屋で知り合いだったから事件には関係なかろうと見当はついていたと。そして説明するのが面倒だから口止めしていただけと――真相、そんだけなの?
 状況が分からずオロオロしているトローネを無視し、レフィーヤは
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