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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
36.『悪』の重さ
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存在している。では、何故彼らは貧民街をそのまま放置しているのか。

 その理由が『情報屋』だった。
 彼らは貧民たちと合同で独自の情報収集ネットワークを所持しており、組織的に行動しているのだ。
 彼らの情報を求める者は多い。例えば急に失踪したファミリアの行方を極秘裏に探りたい存在や、密かに抱いた疑惑について確信が得たい者、『戦争遊戯』を控えて相手の内情を探りたい者など、人伝の情報だけでは足りない場合に彼らはよく情報屋を頼る。
 また、この貧民街には元ファミリアや指名手配犯も多くかくまわれており、その中にはファミリアのとんでもないスキャンダルを知っている者もいる。これらの情報は高く売れると同時に、貧民街で下手な真似をしたらこの情報を公開するという脅しにもなっている。

 他にも、オラリオの内情を探りたい周辺都市の諜報員にとってここは情報の絶好の仕入れ場なために安定した収入があった。
 収入の一部は情報収集協力者である貧民に配分される。貧民はその日に食べるだけのお金と情報や庇護下の治安がいい寝床を確保できるために喜んでこれに齧りつく。また、貧民の中には知恵深き神もわずかながら混ざっており、彼の元にいるギルド非公認ファミリアが貧民街内部の治安維持を行っている。

 そう、オラリオの貧民街はある種の自治都市として明確な縄張りを持ち、他ファミリアに対してある程度の中立を保つだけの地盤を築いている。だからこの街の貧民街はこの街に当然として存在していられるのだ。

「お、ここだここ。この風が吹けば倒れそうなオンボロ小屋が例の情報屋の家だよ」

 ダイダロス通りを地図も持たずにうろちょろ歩いた末に辿り着いたのは、通りの中でも一等入り組んだ場所にあった。あったのだが……。

「え………っと。これって小屋というよりは廃墟……?」

 失礼ながら、レフィーヤはそのおんぼろ小屋にとても人間の住める場所には見えなかった。雑に張られた屋根にあちこち隙間の空いた壁。玄関はおんぼろ布の幕がかかっているだけで、風が吹けば全部小屋の中に入り込んでいる。無遠慮にベタベタ張り付けられたポスターやチラシを見たトローネが悲鳴をあげる。

「やだ、ギルド発行のポスターで壁の穴塞いでますよ!?掲示板から時々なくなってると思ったらこんな事に使われてたなんて!!………ってああああああ!玄関の布きれもよく見たら5年前に行方不明になったお祭りの旗だし!!」
「ファミリアのに比べてパクり易くて丈夫だかんねぇ……ま、家とは言っても住んでる訳じゃないさ。ここはあくまであいつに依頼がある時に利用される待ち合わせ場所みたいなものかな」
「キャアアアアアッ!!こ、小屋の中にギルドからの盗品がゴロゴロと!?せっ……窃盗罪です!窃盗罪で捕まえましょうこの人!!ギルドのペンや用紙に飽き足
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