35.覗きこむほどに、深く
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のはメイドである自分の役目だ。
これでもオーネストの私室に入って掃除するくらいは出来る。というか、オーネストを追い出して掃除することもある。アマゾネス特有の筋力を受け継げなかったメリージアは、無理をせず剣を壁に立てかけてからオーネストの部屋のドアを開けた。
「えーっと、剣置き台はっと……あったあった」
いたく年季の入った台だ。これも元々ここにあった代物なのだろう。重い剣を一本ずつ慎重に台にかける。ここにある剣は全て消耗品で、折った傍から補充されていく。一本の剣を長く丁寧に使うという発想はオーネストにもないわけではないが、彼の置かれた環境がそれを許さない。剣の手入れと戦いでは、オーネストは戦いを選ぶ。何もおかしい事はなく、そういうことだった。
剣をかけ終えたメリージアはその後部屋を後にしようとして――ふと、部屋の中に見覚えのない箱があるのを見つける。この部屋は1日1回掃除しているが、昨日の昼にはこの箱はなかった。ということは、昨日から今日までの間にオーネストがどこからか運び出して来たんだろう。
何なのだろうか、この妙に使い込まれた箱は。今までになかっただけに余計に気になるし、それがオーネストの部屋にあるのが余計に好奇心をかきたてる。
「………………ちょ、ちょっとだけなら……見てもいいよな」
割とあっさり好奇心に負けたメリージアは、あっさりと箱を開いた。そもそも本当に見られたくないアイテムならばオーネストはこの部屋に置かない筈だ。自分に見られても問題ないからこの部屋に置いているんだろう。
中には所狭しと紙が敷き詰められていた。試しに一つ捲って確かめる。
見出しには、『死亡認定書』とあった。
「え………」
次の紙をめくる。『死亡認定書』。
その次、『死亡認定書』。
次、『死亡認定書』。
めくってもめくっても、その全てがギルド公式の『死亡認定書』。そこにはファミリア、非ファミリアに限らずあらゆる人間の名前が書きこまれていた。死因も多岐にわたり、事故死、殺人など様々。後半になると紙の質が急に落ち、その紙には『テティス・ファミリア』の構成員だったと注釈のある名前がつらつらと並んでいる。
軽はずみに覗いただけのものだった筈なのに、そこにはゆうに100人を越える死者の名前が書き連ねられていた。他にもちらほら『地上追放認定』――神が強制的に天界へ送還されたことを示す紙も残っている。すなわち、この箱の中には『永遠に再会できない存在』の名前が並んでいる。
「こんなもんオーネスト様がわざわざ集めたりしねーよな……ってことはこれ、全部オーネスト様が貰ったもの……!?嘘だろこんな量!?」
ファミリアでは冒険者がダンジョン内で死亡するか行方知れずになったとき、『死亡認定書』
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