35.覗きこむほどに、深く
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する。
何の事なのか、ひょっとして自分をからかっているのか。訳が分からず固まる。
「俺が不審者の事を口止めした理由が知りたいんだろう。アズに着いていけば理由が理解できるはずだ」
「……へっ!?え、何でそのことが分かったん――」
「行くぞ、ルスケ。本当は俺一人で十分なんだがな」
それだけ言うと、ブラスは返事を待ちもせずに剣を抱えて歩き出す。余った剣は既に屋敷に置いてきたのか、今は一本しか持っていない。ルスケが慌ててそれに着いていき、レフィーヤはその場にぽつんと残された気がした。
色々と止まり掛けの脳の歯車をぎしぎし回し、ようやくレフィーヤは一つの推論に辿り着いた。
もしかして、自分はブラスにものすごく気を遣わせていたのではないか?思い返してみれば彼はいつも以上に説明するような言葉が多かった気がする。普段なら行動してから説明しない極めて不親切な人がだ。
部屋を後にしたアズが、やれやれと肩を竦める。
「せっかちだね、あいつも。それじゃ俺達も行こうか。レフィーヤちゃんもいいかな?」
「………アズさん」
「なーに?」
「………ブラスさんって実は口下手ですか?」
「うん。特に善意や気遣いに属する言葉に関しては下手ってレベルじゃないな。そのくせ人の考えてる事はバレるんだからホント性質悪いよ」
ブラスに心がばれたのも驚きだが、アズのブラスに対する理解力もかなりのものだ。
「さて、あいつの事はさて置いて、みんなでダイダロス通りに遠足だ!ほらトローネちゃんも立って歩く!」
「ふええ……と、とうとう殺人事件の容疑者と対面……しかもこちらに冒険者二人ということは犯人はこっちの可能性が濃厚!?でででで、でも……アズさんが護ってくれるって言ってたしぃ……」
「………大丈夫なんですか、この人?」
「大丈夫。いつも結構こんな感じらしいし」
顔を青くしたり赤くしたり忙しいトローネは、相も変わらず独り善がりに葛藤していた。
= =
オーネストの屋敷には謎が多い。
三階建てで数十人が一度に暮らせそうな大きさを誇っていながら、何故かこの屋敷は住処にこだわりのなさそうなオーネストが所有している。ギルドが正式に彼を所有者と認めるだけの書類をオーネスト・ライアーは冒険者登録の日にロイマンに手渡し、彼が承認したことで屋敷は正式に彼の物になった。
屋敷の見てくれは一見して小奇麗だが、使われている部屋も事実上一階だけだ。家具などはあってもその他のものが現在住んでいるオーネスト・アズ・メリージアの3人の私物以外ほとんど見当たらず、使われている生活エリアも数部屋とリビング、厨房と地下倉庫くらいのものだ。
何故オーネストがこの屋敷を手に入れたのか、どのような経緯で権利者になったのか
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