34.彼岸をこえた小さな背中
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気迫る働きようで……仕事をしていなければ、心が耐え切れなかったのでしょう」
だとしたら、少なくともその二人には動機がある。
いよいよ犯人に近づいてきた。トローネはそろそろアルガードに対する嫌疑を口にしようとして――ウルが続けて放った言葉に口をつぐんだ。
「20年もかけて少しずつ取り戻したあの子の平穏を死で以って奪おうなどと、いったい誰が斯様な事を……!工房に恨みがあるのならばファミリアの主神たる私を狙えば良いではないですかっ!!卑劣なっ!!」
「工房に恨みのある存在に心当たりは……?」
「逆恨みならいくらでも出来ましょう!少なくとも『舞牡丹』の事件ではヘラ・ファミリアと和解しました!ともすれば、これは組織ではなく個人の恨み……!一番苦しんだのは当事者のあの子たちなのに、身勝手が過ぎるではないですか!」
トローネは頭に冷水をかけられた気分になった。
ウルの手は、怒りに震えていた。彼女にとってアルガードは愛すべき眷属。彼女はアルガードの事を犯人だなどと一遍たりとも疑ってはない。今、彼女は嘗てと今の工房を任せたファミリア達に卑劣な闇討ちを仕掛けた『真犯人』に憤っているのだ。
――今、この神に「アルガードを疑っている」などと告げられようか?
「もはや是非もありませぬ。直ぐにでもアルガードを呼び出します!我がファミリアは戦いは不得意なれど、姿も見せぬ卑怯な犯罪者の手を振り払えぬほど弱卒になった覚えはありません!」
まずい、とトローネは思った。もしもアルガードが本当に犯人だった場合、既に彼の復讐は終わっている可能性がある。だとすれば、事情を知ったアルガードに証拠隠滅されたりしらを切られて逃げおおせる事も出来る。ウルの様子からして彼に嫌疑がかかっているなどと知れれば協力を得られなくなるかもしれない。
逆に、逃走の為に更なる犠牲を重ねられれば目も当てられない。あんな殺人アイテムを作成できる男なのだ。本気になればどれほどの犠牲が生まれるか想像もつかない。どちらにしても、今というタイミングでアルガードを呼ばれるのはまずい。
かといって、彼女をどう説得すればいい。一瞬頭が真っ白になったその直後、アズが口を開いた。
「――落ち着いてくれよ、ウル。どこで犯人が見ているのか分からない現状で派手に動いたら、向こうが功を焦って余計に危険になるかもしれないんだ」
「余計に?何故です?」
「犯人は几帳面だ。1日に一人ずつターゲットを狙ってきている。だとすれば仮にアルガードさんがターゲットだとしても今日一杯は手を出してこない筈だ。いや、むしろカースさんの生存を知って焦っているかもしれない。アルガードさんを護るためにファミリアが大きく動けば、相手はターゲットに手が届かなくなる前に直接動くかもしれない」
「……な
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