34.彼岸をこえた小さな背中
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「デキる人に仕事を集中させると負担も集中して不満が爆発しちゃいそうですねぇ……」
「まさにそれが諍いの種になりました」
アルガードとウィリスはその頃既に『改造』を延々と続ける一日に疑問を抱き、『改造』の業務を縮小しようと主張し始めていたそうだ。しかし、当時の工房は収入の7割が『改造』によるもの。当然ながら反対意見が出た。二人がいたからこそ『改造』の品質が保てて儲けることが出来たのに、その二人が仕事量を減らせば収入の大幅低下は免れない。
次第にグループは『改造』以外の作業を求める二人、それに断固反対する三人、職人として自分たちも『改造』をやらせてほしいという五人に別れ、多数決で作業配分の変更が受け入れられることとなった。
「職人の意地もあったんだろうねぇ。真剣に物作りをしてるってのに、本当に評価・信頼されてるのは二人だけ……自分だって出来ると思った筈だ。……それに見合う実力があるかどうかは別だけどね」
「アズさん、ちょっとその言い方は……」
「あ、いや。悪く言うつもりはなかったんだけどね。ホラ、職人の間ではよくあるんだよ……なかなか本格的な仕事を任されないで燻ってる新人っていうの?自信はあるけど実力が伴ってない人に限って一人前の仕事をさせろってうるさいんだー、ってシユウにいつか愚痴られたのよ」
「まぁ、シユウとも交友があるのですか?うふふ、あの人も大変みたいですね?」
ちなみに話題に上がったその身の程知らずのファミリアはフーの弟弟子にあたるらしいが、アズもまだ顔を合わせたことはない。
「しかし、貴方の指摘は尤もなもの。私としては品質を落としてまで利益を上げる必要はないと言ったのですが……工房の10人はウルカグアリ・ファミリアをもっと大きくすることでこそ私への恩に報いることが出来ると考えていたそうです。結局私はその決意に負けて変更を許可して………それが、ひとつの悲劇を引き起こしました」
「悲劇………ですか?」
完全にではないが、全員の思惑をある程度反映した結果だ。最善ではないかもしれないが、改善はされている。少なくともトローネにはどうしてそれが悲劇とやらに繋がるのかが分からない。だが、アズはその時に不思議と悲劇の正体に勘付いた。
「品質の低下によって武器が脆くなり、お客に死人が出た………しかも、工房の誰かにとって特別な冒険者が。違う?」
「まさにその通りです。アルガードとウィリスが最も恐れていた事態でした。……それにしても、どうして分かったのですか?」
「ちょっとした推理と……過去の『死』の気配。うまく説明できないんだけど、そういうのを感じる体質でね。ヤな体質もあったもんだよ。さ、続けてくれ」
少しだけ切ない苦笑いを浮かべたアズに先を促され、ウルは語る。
「『舞牡丹』ピオ・ル
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