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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
34.彼岸をこえた小さな背中
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た時に静かに一筋の涙を流した。

「そうですか………オスカー、マーベル、クライス、ローレンツ、ゴウ、ミヘイル、クレデント………みな、私の嘗てのファミリアで間違いありません。そう、あの子たちはもう逝ってしまったのね……」
「ウル様……心中、お察しします」
「カースが一命を取り留めたのが唯一の救いなのでしょう。……嘗て我が眷属となりし7つの魂よ、せめて今は安らかなれ――」

 涙をぬぐいもせずに静かに祈りを奉げるウルの姿は神々しくも物悲しく、まるで絵画から抜け出してきたようだった。その清廉な姿はどこまでも純粋で穢れない。

(……トローネちゃん、今でも『主神がグル』って言える?)
(イジワルな質問しないでください……あの祈りを見たらそんなこと口が裂けても言えませんよ)
「……………すみません、時間を取らせてしまって。それで、アルガードの話でしたね?」

 祈りの時間が終われば、待つのは良くも悪くもこの事件の鍵となる職人の話。ウルもそれを分かっているのか、哀しみを鎮めて再び二人に向かい合う。

「アルガードは……あの子は友神から面倒を見てあげてほしいと紹介された子よ。鍛冶系のファミリアはドワーフなんかが多いから、どこのファミリアでもソリが合わなかったみたい」
「ああ、ドワーフの人達ってやたら豪快な癖に手先は器用だからねぇ………気持ちはちょっと分かるかな」
「うちは元々本格的な武器とかは作らないファミリアだったからどうだろうな、って思ったのだけど……アルガードは装飾にも拘る方だったから直ぐに馴染んだわ。そのうち彼の影響で武器作りに目覚めた子が何人か出てね?それで、思い切って武器も作れる設備を整えた工房を作ったの。10人で回してたかしら……その頃は『改造(カスタム)』が流行ってたから、ほぼ『改造』専門だった」
 
 嘗てを回顧してか嬉しそうに語るウルの話ではこうだ。ホーム外に作ったその工房は開工当初10人で回しており、被害者8人とアルガード、そしてもう一人の男……ウィリスという男で構成されていたそうだ。
 当初の流行りに対応していたこともあって工房は大成功。短期間であっという間に元を取り、その後も暫くは安定した稼ぎを出していた。ところがそれから僅か1年も経たずして工房に問題が発生した。それは、『改造(カスタム)』の存続の有無、方向性の有無を巡って激しい口論が起きたのだ。

「『改造(カスタム)』は難しい技術……品質を落とさずに強化するには高い練度が必要だった。アルガードとウィリスにはそれが出来たのだけれど、残りの8人は残念なことにそれに追いつける技量ではなかった。つまり、当時の工房はアルガードとウィリスが『改造』に付きっきりで、残りの8人がその手伝いをしつつ思い思いの作業をしていたの。最初はそれで上手くいっていたけど……」

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