34.彼岸をこえた小さな背中
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事件捜査というのは使いっ走りより指揮する側のほうが忙しいもんだな、とヨハンは内心でごちた。
「………ヨハンさん!別動の連中から報告が上がりました!やはりブラスさんの言うとおり、ガイシャ7人は全員が被害に遭う直前まで金属製の首飾りをつけていたようです!目撃証言、知人の証言でハッキリしました!これで現場に散らばった鎖のようなものの正体が掴めましたね!」
「馬鹿野郎、首飾りの正体がわかってねぇのに浮かれるな!同じ形状のチェーンを使ったアクセサリ類を探し回って工房を特定しろやッ!!」
「ヨハンさ〜ん!本部から通達!ガイシャは全員が元『ウルカグアリ・ファミリア』で現在は非冒険者だったとのことです!トロちゃんと黄金仮面さんが直接主神に話を聞きに向かってま〜す!」
「その『ウルカグアリ・ファミリア』とその近辺について徹底的に調べろ!聞き込み班にも伝達しておけ!あと念のために同業ファミリアの意見を聞きてぇ!」
「ヨハンさん!西区でオラリオ外から来たと思われる不審者が暴れて『トール・ファミリア』に制圧されました!」
「この忙しい時に何所のバカだ!?本部の拘束室までしょっぴいてもらえ!褒章を要求されたら話をロイマン所長に回しておけ!」
指揮権を任されているのだから同じ部屋にずっと籠っていれば若いのが仕事をしてくれるかと思いきや、どうやら今時の職員は大半が事件捜査をした経験がないらしい。だから指示を飛ばす時に二つ三つは多く言葉を飛ばさなければきちんと言葉の意味を理解してもらえない。
ヨハンが20代の頃はこれほど拙い組織ではなかった。もっと経験豊富な先輩方に囲まれて日々自分の努力不足を見つけられるような、強い組織だった。なのに今では元服を済ませて間もないような若い連中ばかりぞろぞろ増えて、古株は減るばかりだ。
(『地獄の三日間』で一時期ものすげぇ退職者が出たからな……ベテランの数が足りねぇんだよ)
あのオラリオ最低最悪の三日間、ギルドはこの街の最も汚れて歪んだ場所を手ずから摘出する大手術を敢行することになった。しかもあの事件から数年間、オラリオの治安は歴史上最悪にまで落ち込んだ。
目を覆いたくなるような悲惨な事件やこの街を揺るがす大事件が立て続けに起き、対応に追われたギルド職員の何人も精神病にかかり、何人もが過労で倒れ、そして何人もが家族を連れてオラリオを後にしていった。ヨハンもあの頃はまだ半人前だったので、随分右往左往させられたものだ。
ギルドがその危機を乗り越えてオラリオの秩序として君臨し続けられるのは、間違いなくロイマン・マルディールという男の大改革――経費削減とファミリアに対する追加税の導入による資金確保と適切な運用があってこそだ。拝金主義などと顔を顰める者もいるが、あの男は金で危機を解決できるならその潤沢な資金
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