33.改造屋
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―そんな衝動が、無垢な少女の心を激しく揺さぶった。
「それでは不満かな、可愛いお嬢さん?」
「……………し、信じまひゅ」
数秒ほどアズの笑顔に目が釘付けになっていたトローネは、頬を火照らせながら微妙に呂律の回らない舌で返事をした。この瞬間、トローネの心は完全にアズの微笑みに『魅了』された。
ロキが面白半分でアズに教え込んだ女性オトしのテクニック――別名『神威微笑』が炸裂した瞬間だった。
= =
オラリオにある新聞は、現代日本の新聞と比べれば内容は洗練されておらず、まだ『薄っぺらい雑誌』程度のものでしかない。内容も真実と根も葉もない噂が入り混じった信憑性の高くない代物だ。情報媒体というよりは娯楽で、普及度は低い。
物珍しさに定期購読する固定客もいるため売上としては悪くないが、全体的に脳筋の多いオラリオでは新聞の価値などトイレのちり紙程度にしか思われていないのが実情である。情報を重んじる者、情報の中に隠された更なる情報を求める者にとっては新聞は街の息吹を感じる『生きた情報』だが、それ以外の者は情報を酒場で仕入れるスタイルをずっと続けている。
ありていに言えば、この街での『新聞』という文化は時代を先取りしすぎた。
一部の特殊な人間――ギルド長のロイマンや探偵稼業、情報屋、神々はその価値を認めているが、今のオラリオの人間にはそれが価値あるものだという実感が湧かない……いや、新聞という情報媒体の利用方法をいまいち理解できていないのだ。
おそらくこの世界で新聞というものの価値が高まるのはもっと先の事になる。
だが、逆を言えばいつか新聞が日常に溶け込む日が来る。
新聞を製作している『新聞組合』のメンバーは、そう信じている。
街を歩く男――ハンチング帽をかぶった若者、パラベラム・ルガーもまたその一人だった。
メモを片手に周囲を見回すパラベラムは、たまたま目に入った煉瓦屋らしき店で玄関を掃く男に阿指酔って質問した。
「えっと……すいませーん!この近所にアルガードって人の住んでる鎧工房がある筈なんですけど、どこにあるか知ってます?」
「ああ、アルガードさんの家ですか?ここを右手に行った先の路地から行けます。玄関先に鎧があるからすぐわかると思いますよ?そういえば最近あの人を見かけないけど……ま、元々外出の少ない人だし」
「ほうほう、これはどうも御親切に!あ、それと……これよかったらどうぞ」
目的地の情報を聞きだせたパラベラムは感謝の品を渡すように、肩にかけた鞄から紙束を取り出して男に差し出す。
「これは……『オラリオ新聞』、ですか?」
「自分、『新聞組合』という所で新聞っていうものを作ってるんです。代金は要りま
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