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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
33.改造屋
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ヤにこんな言葉を漏らしたことがある。「オーネストの心は常に表と裏の狭間にある」、と。意味は分からなかったが、彼――今は彼女だが――が(そこ)(ここ)の違いを良く知っているのだと言う事だけは理解できた。

「ここの記事だって本当に起こっているか確認できないものもあれば、この情報網でも掴めないほどこっそり行われる裏取引もある。裏の連中は、同じ裏か或いは確実に落とせるカモにしか手を出さない。よって、表の人間は綺麗な世界だけ見ていてもしっかり生きていける訳だ」
「まぁ、アタシ達『新聞連合』は表も裏もきっちり見るのが仕事なんだけどねー。でないとスクープを逃しちゃうし?目を背けたらその分だけ真実が遠ざかるしー。今回の事件はイイ記事になりそうね!」
「……人死にで金儲けッスか。ハゲタカ精神旺盛ッスね」

 テンションの高い編集長ペイシェに、ルスケの冷たい視線が突き刺さる。言葉には出さずともレフィーヤだって同じ気分にはさせられた。そう、この女はそうして人の不幸を飯のタネにしてる存在だ。彼女に限らず『新聞連合』は多かれ少なかれそういう集団だった。
 しかし、ペイシェはさも心外そうに首を横に振って大仰に溜息をついた。

「あら失礼ね。別にアタシ達は金が欲しくて仕事してんじゃないのよ?そういう人が目を逸らしたり隠そうとするような暗部にこそ真実が潜んでるの。今回の事件だって、アタシ達が記事にしなければ痛い腹を探られたくない連中が情報を隠滅するかもしれないのよ?そんな連中の小細工で真実が闇に覆われたら………隠したもの勝ちで腹が立つじゃない?」
「それは……でも、死を悼むとかそういう発想はないんスか?」
「馬鹿ね。死んだ人間に遠慮した結果、真実を知らずに今を生きる人間が損したら意味ないじゃないの。うちの『新聞』がそういう案件を記事にするのはね……そうやって悪い連中だけが知っているような情報をスッパ抜いて、いい連中にも知ってもらって警鐘を鳴らすことでもあるのよ」

 彼女の姿勢は褒められたものではないが、その思想には筋が通っている。反論できずに「でも……」と呟いたルスケに対し、ペイシェはトドメを刺した。

「だいたい、そう言う貴方は『新聞』を暇つぶしに購読してるんでしょう?その新聞には今回みたいな誰かの不幸も載っていた筈よ。記事を読む分には暇つぶしなのに、少しばかり物事に関わった途端に不謹慎だって騒ぎ出すのはちょーっと自分を都合よく考えすぎなんじゃない?」
「うぐっ」
「記事出す阿呆に見る阿呆♪人の記事を見て暇つぶししてた貴方は不謹慎じゃないのー?オネーサン気になるなぁ〜♪」
「その辺にしておけ。民衆がどいつもこいつも確固たる信念を持っている訳じゃない。気が変わることはよくある」
「ええ、もうちょっとからかいたかったのに!ぶーぶー!ブラスちゃん
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