32.流動情報
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がとれていた無数の紙媒体が二人の前に不気味な影を落とし――直後、二人の頭上に雪崩のように崩れ落ちてきた。
どさどさ、ばさばさ!!と盛大な音が鳴り響き、その中から書類塗れの二人が姿を現す。
二人は互いを見つめ合い、アズはばつが悪そうに項垂れた。
「なんか、ちゃんと助けきれなくてごめんね……」
「えと……」
「あー、格好悪っ……っていうか鎖使えば普通に防げたじゃん!しくじったぁ……!」
ぬぐおおお、と唸りながら頭を抱える仮面の男。その姿が、今までのアズライール・チェンバレットのイメージと比べてあまりにも情けなくて――自然と笑みが漏れた。
「くすっ、ふふ……♪」
「……人の不幸を笑わないでよ。唯でさえ恥ずかしいのにさー……」
「だ、だってぇ……なんだか落ち込んでるアズライールさんが子供みたいで、可笑しくて……!」
怖くても怪しくても、それが悪い人だとは限らない。中にはこんな間の抜けた人だっているだろう。こみ上げる可笑しさに笑いながら、トローネはもっとアズという男を知りたくなった。
そんな二人の傍らの落下物の中に、一人の冒険者のプロフィールが書きこまれた項の開かれたファイルがある事に二人が気付くのは……それから間もなくの事。
= =
『レフィーヤ。お前はギルドに依頼を受けた訳ではないから捜査に参加する必要はない。今日は大人しくホームに帰るんだな』
ブラスにそう言われた瞬間、レフィーヤはある錯覚を覚えた。
お前は役に立たないか帰れ――そう言われたかのような錯覚を。
いや、事実としてそう思われていたのかもしれない。レフィーヤはこのような事件には慣れていないし、メンバーの中では明らかに子供に分類されるだろう。客観的に見てその主張は正しい。レフィーヤに戦闘経験の心得はあっても事件捜査の心得などある筈もない。
しかし、理屈ではそう分かっていた筈なのに、レフィーヤはつい反射的にこう返した。
『ロキ・ファミリアの名を背負う冒険者として、ここで黙って身を引くことは出来ません!』
自分だって少しは役に立つ――そんな意地もあったのかもしれない。ブラスの隠し事の真相が気になっていたこともある。しかし、それ以上に胸の内に抱えていたのはもっと稚拙な感情だった。
何の事はない、子供っぽくてちっぽけな劣等感だ。
冒険者として、人間として、この場で自分という存在が全く必要とされていないという事実を抱えたまま帰るのが嫌だった。最低でも自分を恐怖させた事件の真相くらいは見極めておかなければ気が済まなかった。
ブラスは、そんなレフィーヤを一瞥して『邪魔はするなよ』とだけ告げて歩き始めた。
子供というのは本当に嫌なもので、その言葉にカチンとくると、相手の嫌な部分しか
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