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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
32.流動情報
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から若干強張っている体を更に強張らせる。

(どーして資料の位置を知ってるんですか!?はっ、ままままさか既にお金でロイマン局長を懐柔済みだから知ってて当然!?……って事は既にギルドは陥落していて哀れな私は死神に捧げられる若くて美しい生娘の生贄なのですかぁぁぁ〜〜〜〜っ!?)

 ……相も変わらず何故か自分を過大評価しているが、まぁギルド番付の『受付嬢アホかわいい子ランキング』では1位らしいので大目に見てあげよう。

 トローネにとって、アズライールという男は途轍もなく不気味な男だった。

 口元はいつもへらへら笑っているのにその瞳は黄金の仮面に隠されて見えず、黒いコートの隙間から漏れ出す尋常ならざる負の気配だけがやけに冷たく背中をなぜる。トローネお得意のデータ収集を以てしても彼は行動報告が極端に少なく、中には賄賂らしきものを手渡した形跡さえある。
 秩序を最も重んじる筈のギルドに於いて、彼はあの『狂闘士』の仲介役という特殊なポジションにある。今まで完全に野放しだった獣を繋ぐ、ギルドからの唯一の鎖。故に――多少の無理も彼が相手ではまかり通ってしまう。
 そんな存在、トローネでなくとも疑ってかかるのが普通だ。

(ロイマン大先ぱ〜〜い………ほ、本当に信用できる冒険者なんですかこの人は……?嗚呼、許されるなら前途有望な私じゃない誰かに代わって欲しい!顔だけで仕事できないミイシャ先輩とかに!)
「ええっと………当時流行りだった装備品の改造(カスタム)業に手を出したものの、引き際を誤って大赤字。経営を持ち直すために業績の悪い冒険者をファミリアから追い出し……リストラかぁ。世知辛いね」
「えっ!?は、はい!!」

 咄嗟に話しかけられてトローネはびくりと跳ね上がり――その衝撃で座っていた椅子がバランスを崩して後ろへ傾いていく。

「あっ、へっ?はわわわわわわわぁっ!?」
「おっと危ない!」

 直ぐに事態に気付いたアズが資料を投げ出して慌ててトローネの椅子を掴むが、既に重心が傾きすぎて止めるのは間に合わない。咄嗟に身を乗り出したアズは自分の足をストッパーに、トローネが床に叩きつけられる寸前でどうにか椅子を停止させた。

「ごめんごめん、なんか驚かせちゃったみたいだね?」
「……………あ、あの。ありがとうございまひゅ」
(……ございま『ひゅ』?)

 まだ上手く事態が把握できていなかったトローネは、やっと自分が助けられたことに気付いて何だか自分が情けなくなった。散々警戒していた相手に助けられるなんて、自分はどんだけトロいのだろうか。

 と、その直後――テーブルに積み上がっていた書類がぐらりと揺れた。

「えっ」
「あっ」

 アズが投げ出したファイルがテーブルの上の書類の山にぶつかったのだろう、バランス
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