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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
31.心の温度差
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る上に見知った顔だったようだが……トラブルを避けたいのなら下手な嘘はつかない方がいい」

 ヨハンは完全に決めつけにかかっている。これは面倒な状況だ、とブラスは内心で毒づいた。本人は本気で間違えている上に至って真面目なつもりらしい。そして間抜けな癖に真面目な人間というのは話をどこまでも厄介な所へ無自覚に運んでいく。
 しかも、ここでレフィーヤが違うと主張した所で「口裏を合わせている」と決めつけられたら聞く耳を持ってくれない可能性が高い。

「……自分の正体を隠そうとする、か。それがどういう意味を持っているのか知っているのかね?」
(無視して帰るか殺すかどっちにしようかこいつ)
(ハッ!?相棒がとてつもなく物騒な事を考えている気配がする!!)

 ――忘れられがちだが、ブラス(オーネスト)はギルドが大の嫌いである。嫌いなものは嫌い、鬱陶しいものは鬱陶しいという竹を割ったような判断力を持つ彼女にとってヨハンの態度は不愉快極まりなく、言ってしまえば「下手に出てやったらつけあがりやがって」という一触即発レベルの苛立ちを抱いている。
 すわ爆発か――!?と異変に気付いたアズが戦々恐々とした瞬間、想いもよらぬところからフォローが入った。

「ま、待ってくださいセンパイ。その人、本当に『剣姫』じゃないかもしれません」

 オドオドしながら小さく挙手したのは、この中で一案頼りなさそうな御仁――トローネだった。

「お前がそんな風に口を挟むなんて珍しい……理由は?」
「アイズ・ヴァレンシュタインなら前に仕事で見たことがありますが、その時に持っていた剣はゴブニュ・ファミリアの専用剣でした。事実、税収に関する資料をこの前見た時もロキ・ファミリアとゴブニュ・ファミリアは専属契約者を多く抱えており、『剣姫』の名もそこにありました。でも彼女がいま抱えている剣はヘファイストス・ファミリア製と見受けられます。武器の違いは冒険者の違い……ですよねっ」

 どこか慌てたように口早に説明するトローネだが、その指摘にヨハンははっとしてブラスと名乗った女性の持つ剣を見る。複数本持っていることも妙だと思っていたが、見れば剣の鞘にヘファイストス・ファミリア製であることを示す印があった。
 それに、トローネは鈍くて遅いところはあるが記憶力と推理力が高い。その正確さたるや、あらゆる書類に記載された情報を繋ぎ合わせて会ったこともない冒険者の懐事情を理解できるほどだ。彼女の言葉を聞いたブラスは、肯定を示すように傍らに立てかけた剣を拾い上げてギルド三人衆に見せる。ヘファイストス・ファミリアのスタンダードモデルだ。

「………椿・コルブランドと専属契約をしている。『契約冒険者(テスタメント)』をやっている手前、見てくれは市販の剣と同じだがな」
「なるへそ……専属契約者
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