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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
31.心の温度差
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 『重傑(エルガルム)』の名の通り、ガレスはオラリオ内でもトップクラスの耐久を誇る最強のドワーフだ。高レベルの魔物でさえ彼に膝をつかせるのは至難の業であり、正面からのぶつかり合いで彼に勝てる冒険者は片手で数えるほどしかいないだろう。
 そんな彼を素手で、しかも鎧越しに殴ったら普通は手の方が折れるもの。しかもこの時のオーネストは黒竜との無謀な戦いのダメージで死に体な上にティオナのストレートパンチが顔面に直撃して意識が朦朧としていた筈である。そんなコンディション下で何をどうすればあのガレスに膝をつかせるのか。そして、そんな事をした人間が『人間は呆気なく死ぬ』などと、どの口がほざくかという話である。

「………………………」
「………………………」

 しばしの沈黙。

「………俺は、人より死ににくい。だからいつも俺より先に周りが死ぬんだよ」
(あれ、地雷踏んだ!?)

 オーネストの表情は変わらないが、心なしか肩が落ちたような気がする。こういうときどんなふうにフォローすればいいのか全く分からない。アズなら何気ない台詞で普通にコミュニケーションを取れるだろうに。

(アズさん早く戻ってきて〜〜〜!!)
「ん?俺を呼んだか?」

 背後から――薄れてもなお氷のように冷たい死神の気配。
 恐る恐る振り向いた先にいたのは、黄金の仮面を被った見覚えのある男。

「よっす!ギルドの人連れて来たよー!」
「…………ぴぎゃああああああああああああああああああああああああ!?」

 人間は不意を突かれると人生で想像したこともない悲鳴をあげるものだと――この日、レフィーヤは学んだ。


 閑話休題。
 精神を立て直したレフィーヤ、容体の安定した男性が病院に運ばれていくのを見送ったブラス、そして現場にギルド職員を案内したアズの3人は、近くの喫茶店で事情聴取を受けていた。ヨハンが質問し、ルスケとトローネははメモ役らしい。

「えっと……まずはお三方の名前を聞こうか。金髪の君はアイズ・ヴァレンシュタインで間違いないね?」
「俺のどこがアイズだ。よく見ろ」
「レフィーヤ氏を連れていて金髪金目の女剣士だろう?どう見ても『剣姫』ヴァレンシュタインだ。持っている剣も第一級冒険者の品質だしな」
「しまった、言われてみれば条件が揃っている……!!」

 早速ブラスに面倒くさい受難が降りかかった。
 確かにこの街に金髪金目でレフィーヤと共に行動する女剣士などアイズしかいない。本人に親しい者でもなければ普通に間違えておかしくない。何より二人の顔立ちは割と似通っているから、遠目に見れば本人との違いが分からないのだ。

「くっ……似ているだけで別人だ。レフィーヤとは街で偶然出会った」
「ほう、余所のファミリアにしては呼び捨てにしてい
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