31.心の温度差
[3/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れている所為だ。お前も魔法使いなら雷の特徴くらいは知っているだろう?リヒテンベルク図形痕がないということは電流は表皮を流れず体の中に直接叩き込まれた可能性が高い。広義に於いては怪我と同じことだからポーションで治るだろう」
(リヒテンベルク・ズケーコンってなんですか………!そりゃ雷の勉強はしましたけど、やったのは精霊を媒介にした人工的な雷の発生原理までですよ!人体に命中した際の対処は魔法使いじゃなくて治癒士のお仕事ですっ!!)
そもそも、この世界で魔法とはあくまで魔物に対抗する術として神や精霊に授かったものだ。魔法というスキル自体も希少なものであり、人に対して雷を放った際のダメージなどという限定的な知識を知ってる者などまずいない。
「大体、なんでわざわざポーションを水で薄めてるんです?普通のポーションを飲ませてあげた方が……」
「こいつはさっき一時的に心停止になったんだぞ。今のこいつは体内の流れが乱れて激しく不安定な状態になっている。ポーションは確かに傷を治すには最適だが、それには急激なコンディションの変化というリスクが伴う。こういう時の人間はちょっとした刺激や負担で簡単に突然死するものだ……しかし、傷がある以上は放っておいても死ぬかもしれん。リスクとリターン両立させるには、これが一番いい」
「ダンジョンでもない所でそんなに簡単に人は死なないと思いますけど……」
「お前が思っているだけだ」
「なっ………!」
余りに挑発的な物言いに流石のレフィーヤも頭に血が上りそうになるが、その苛立ちを治めたのもブラスの言葉だった。
「例え神の恩恵を受けようが、どんな魔法を覚えようが………所詮人間は人間でしかない。最期ってのは驚くくらい呆気ないものだ。どいつもこいつも、な」
その時だけ、いつでも事実を見つめているオーネストの瞳はどこか遠い場所を眺めていた気がした。
自分より長い間危険な場所で戦い続けた戦士の言葉は、一般論を語るそれとは比べ物にならないほど重い。
「………でもそれ、黒竜に殺されかけて瀕死の重傷を負いながらもう一度戦いに行こうとして大暴れした挙句にガレスさんを素手で殴って膝をつかせた人の台詞じゃないですよね?」
「………………」
これは又聞きした話だが――数年前、黒竜に殺されかけていた所を助けられてロキ・ファミリアに看病されていたオーネストは意識を取り戻すなり看病していたティオネを突き飛ばして武器も持たず医療テントを脱走したそうだ。
止めに入ったフィンを投げ飛ばし、それにキレたティオナの本気の拳をクロスカウンターで迎撃して逆にKOを取り、最後に立ちはだかった『重傑』ガレスの鎧を着た腹を素手で殴りつけて吐血させたところでリヴェリアに不意を突かれてトドメを刺されたらしい。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ