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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十話 宴の始末は模糊として
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軍総司令官を任ぜられるのは自然なことであった。

 ――閑話休題――


「つまり、いつまで守るのか、敵の行動にどのように対応するのか、なにをもって作戦目標とするべきか、どのように救援を行うべきか、これらを決定してから発令を行うべきではないかと考えます。
兵部省としては戦略単位の兵員をむざむざと捨てられたらまことに困ります。
が課長閣下は如何にお考えでしょうか?」


「‥‥‥理事官閣下の意見はもっともであると考える、六芒郭を利用するならば支援物資の規模、救援作戦実行時期を決定しなければならない。
逆に言えばそれが定まらぬのであれば近衛総軍本体と合流し、皇龍道防衛に充てるべきであると考える」

「‥‥」
 豊地の案を支持する参謀達が視線を交わす。ここで露骨に見捨てるべしと言うわけにもいかない。

「‥‥‥皇龍道の兵力を動かすことはできません、動かすなら内王道を防衛する駒州軍しかないかと」

「であろうとも、だ」

「雨期の訪れ次第だが――10月半ばをめどとすべきだろう」

「なら龍州軍の再戦力化は間に合わんだろう、東方辺境領姫直轄の軍団が動いている可能性は高い。救援が可能なのか?軍団が動くということは連絡線の構築も完了したということだ」

「辺境領姫直轄の軍団が動いた場合は雨期の前に突破を図る可能性が高い、保有する師団は5個師団を超える。ならば皇龍道に3個師団以上を投入するか‥‥逆に六芒郭の包囲部隊に陽動を仕掛け事後は後方を扼することで攻勢を断念させるというのはどうだね」

「万が一、敵が包囲に専念したときは?」

「その時は――――」



 そして――密かに〈大協約〉世界の歴史の分岐点とすらされる決定は誰も彼もが己の閨閥と自身の保身という事情を兵理にまぶして捏ねあげられた物として焼き上げられたのであった。


七月三十一日 龍州 蔵原市周辺、集成第三軍駐屯地 閲兵式典
独立混成第十四聯隊 聯隊長 馬堂豊久


「駒城閣下、西津閣下へ!総員捧げェ銃!!」
 曹長の令に応え、兵達は銃をささげる。彼らが戦地に赴いた際は四万に届かんとする兵力であった。だが戻ってきたのはその七割程度だ。砲兵隊に至ってはまともな装備を整えている部隊を数えた方が早いほどである、それでも龍州軍や集成第二軍に比べれば遥かにマシである。要するに龍州で追い回された敗残兵の中では一番マシな連中でしかないなのだ。

 だが――それでもなお彼らは紛れもない〈皇国〉の英雄達であった。少なくとも民草たちがそう受け止めることを執政府の誰もが望んでいた。
 彼らは反攻主力としては文句なしに苦難を乗り越え、ついには敵を包囲殲滅できるのではと思わせる程の戦果を挙げ――撤退時には一個師団、敵兵力の3分の1を機能不全にして
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