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既に失われたもの
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第一章

                      既に失われたもの
 ある居酒屋でだ。三人の男達がいた。
 一人は若い、まだ二十代と思われる青年だが後の二人はだ。三十代半ばと思われる。一方は四角い顔をしておりもう一方は細長い顔をしている。
 その二人がだ。今向かい合いビールを飲みながらこんな話をしていた。
「だからな。色は黒だ」
「いや、赤だ」
 四角い男は黒、細長い男は赤だと主張している。
「黒が一番いいんじゃないか。何か艶があってな」
「艶があるのは赤だろ。目立つしな」
「目立つのは黒だろ。あの色でこそブルマじゃないか」
「だからブルマは赤だ。それこそが目に入って印象付けるんだ」
 男達はそれぞれ主張する。そのブルマについてだ。
 四角い男はだ。こんなことも言った。
「黒、腰を覆うその色のよさがわからないのか」
「赤、あの光る輝きの色が女の子の腰にあるんだぞ」
「黒に決まってるだろ。何でそれがわからないんだ」
「バレーボールを見ろ。赤の方がいいだろ」
「いや、体育の授業の黒だ」
「バレーボールの赤だ」
 互いに言い合って引かない。その色についてだ。まるでそれが絶対のものであるかのようにだ。二人はそれぞれの主張を引っ込めないのだ。
 さらにであった。四角い男はこう主張した。

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