二十八話:理解
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いう存在がない、真に平和な世界。恒久的に争いなど起きない世界」
「誰も傷つくことのないあるべき未来、あるべき世界の為に」
平和の為だけに生き続けてきた三人は何も映していない切嗣の視線も気にも留めずに語り合っていく。良き未来を、良き人生を、幸福な世界を。余りにも美しく、汚すことを戸惑うような夢の世界。しかし人々は彼らにこう尋ねるだろう。そんな世界をどうやって創るつもりかと。だとしても、彼らは迷うことなく答えるだろう。
『“この世全ての悪”の根絶を行う』
彼らは疑わない。この世の悪という悪が消えた世界であれば全ての人類は永劫の平和を手にすることができるのだと。盲目的に、狂信的に、かつての英雄達は世界の平和を謳い上げる。そんな様子を切嗣は黙って見つめていたがやがて立ち上がる。
「それでは、仕事の方に戻らせてもらいます」
「うむ、おぬしも計画の最終段階では表に立つのだ。準備は怠らぬようにな」
「心得ています、議長殿」
「エミヤ、スカリエッティへ私からの言葉を伝えておいてくれないかい」
「なんでしょうか、副議長殿?」
議長からの言葉を最後に歩き出そうとした切嗣を副議長が呼びとどめる。そのことにほんの少しだけ眉を動かし、体の向きを変える。副議長はまるで買い物を頼むかのような自然さで告げる。
「私の体を至急用意しておいてくれ。私自らが最後は赴くとね」
「……分かりました。伝えておきます」
余りのことに一瞬だけ目を見開くがすぐに元に戻り頭を下げる切嗣。そして、一度目の奥底で残忍な笑みを浮かべている世話係の女と視線を交わし歩き出していくのだった。
しばらく歩いたところでデバイスからスカリエッティに通信を入れる。その顔がどことなく不機嫌そうに見えるのは本来は彼の顔など見たくもないからであろう。
「スカリエッティ、さっさと応答しろ」
【やあ、君の方から連絡をくれるなんて珍しいじゃないか。何かあったのかね?】
「副議長が至急体を用意しろと言っていた。それと最後には自分で動くとな」
【なるほど、確かに承ったよ。しかし、くくく……実に滑稽なものだ。そうは思わないかね?】
隠すこともなく最高評議会が滑稽だと告げるスカリエッティに切嗣は沈黙で答えを返す。彼らは夢にも思っていない。スカリエッティが自分達の拘束から抜け出す機会を虎視眈々と狙っていることを。己の正義を信じて疑わない彼らは気づくことなどできはしない。
【私の生みの親には最高級のお返しをしようと思っているのだよ。そのための小道具も先日手に入れたからね。そうだ、君もなにかするかね?】
「僕にとってはどうでもいいことだ。興味があるのは僕の望む世界だけだ」
【そうかね。いや、実に君らしい答えだ。ところで話は変わ
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