二十八話:理解
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き残ってしまった場合に起こる心の病であるサバイバーズギルト。病名としては一言で済んでしまうが現実としては単純な問題ではない。
治療をするにしても無理に思い出させてしまうと精神が崩壊する恐れすらある。同時に正義の味方になるという夢自体は単純に罪悪感だけで成り立っているものでもないだろう。そこには多分に憧れも含まれており、今のスバルの原動力となっている。無理矢理止めさせることもできない。
「自分のせいで味方が危険になる……って言ったら止まっても納得はしねーだろうな」
「それに自分一人なら問題ないって孤独になりそうやしなぁ」
「……とにかく、少しずつ話してお互い納得いけるように頑張ってみるね。一朝一夕で変わるようなものじゃないと思うし」
「そうやね。それじゃあこれからはスバルの動向に気を付けて指導をお願いな」
「うん」
ひとまずは現状を維持しつつ徐々に変えていく。そういったところで落ち着き、なのは達は解散していく。しかしこの時彼女達は予想していなかった。予想よりもずっと早くスバルの理想を否定する者が現れることを。
一体、どこでこの者達は歪んでしまったのだろうか。
目の前にある脳髄を入れた容器を見つめ切嗣は思う。しかし、すぐにその考えは間違えだったと目を瞑る。自分と同じだ。彼らはどこまでも真っすぐに生き過ぎたが故に他者から見れば歪んで見えるのだ。
一ミリたりとも歪みがなく、どれだけ伸びようとも何人とも触れ合わないほどに真っすぐ。それは歪んでいないが故に歪みだ。本来人間とは大なり小なり歪みを抱えて生きているものだ。それが人間のあるべき姿。だが、彼らにはそれがない。世界を救うという一点に全てのベクトルが向いている。
無数の曲線の中に一つだけ直線が混じっている。そんな時、歪んで見えるのは曲線だろうか、それとも直線だろうか。本来、歪んでいることが正しい物の中に歪んでいないものがある。それこそが歪みなのだ。黒い紙の上に一滴だけ垂らされた白い水滴。どちらが場違いかは明白。穢れなき正義など人間にとっては歪みでしかない。
「エミヤよ。計画の方はどのようになっているのだ?」
「順調です。そう遠くないうちに全ての準備が整います」
「そうか。しかしくれぐれも気を抜くでないぞ。この計画には文字通り世界がかかっておる。それを重々承知しておろうな」
「勿論です。必ず―――理想の世界を創り出しましょう」
最高評議会の書記に問いかけに無感情で答える切嗣。スカリエッティが考え出した世界を望む世界に塗り変える禁忌。最高評議会はそれに飛びついた。もとより、喉から手が出るほどに渇望していたのだろう。彼らの理想とする平和な世界を。
「この時をどれだけ待ち望んでいたことか」
「悪と
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