二十八話:理解
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《・・・・・》人達の一人なんだ」
生き残った。それは正しいことであり、喜ぶべきことである。しかし、あくまでもそれは当事者以外からの主観。“生き残れた”のか“生き残ってしまった”のかは本人だけが知るところである。
「火災の発生地に居た人達は全員死んじゃって……スバルだけが助け出されたの」
「助け出されて……どうなったんだよ?」
「そっから先は私が話そうか。この前ナカジマ三佐から詳しいこと聞けたからな」
この世の終わりのような地獄の中、“正義の味方”によって救い出されたスバル。そのことを聞きヴィータは顔を歪めると共にさらに尋ねる。その疑問に今度ははやてがなのはからバトンを受け継ぎ、つい最近スバルの父親であるゲンヤと姉のギンガと話して聞けたことを話し始める。
「スバルは昔は傷つくのが嫌いな子でストライクアーツも魔法も習ってなくて、あの事件の後から強うなろうとし始めたらしいんよ」
「別にそれは悪いことでもないよな」
「まあ、それだけならええんやけど、その時から今みたいな性格にもなって……あるものになるって決めたんやって」
険しい表情で語るはやてになのはとヴィータは唾を飲み込む。普段は険しい表情をしないはやてがこういった表情をするときは必ず何か重い出来事があったときだ。つまり、今から言うことは少なくともはやてにとってはそれほどの話なのだ。
「自分を救ってくれた人みたいに―――正義の味方になりたいって」
ああ、やっぱりそうか。ヴィータの心に沸いた感情は驚きではなく納得であった。ただひたすらに誰かの為だけに行動し続ける姿はまさに正義の味方であった。だが、それは人の理想が生み出した偽りの正義の味方だ。
誰かのためにしか生きられないのははっきり言って歪みでしかない。正義の味方という理想像は現実に現れれば何者よりもおぞましい存在である。人間味を感じさせなければ人間はその人物を同じ人間とは思えない。はじめは救ってくれたことに感謝をするだろう。
しかし、時が経つにつれ何も求めない正義の味方に疑心を積もらせる。本当に彼は無欲なのか? 実はもっと恐ろしい何かを企んでいるのではないか? 最後には人々は事実無根の罪を正義の味方に被せその命を奪うだろう。自らを正義と名乗って。
「まあ、その夢を目指すっていうのは間違いやないんやけどな。ただ、自分をないがしろにし過ぎなんよな」
「きっと……罪悪感があると思うんだ。自分だけが生き残ってしまったって」
「だから自分の命を投げ出してまで、誰かを助けるって責務を果たそうとしてるのか? せっかく助けてもらった命をなんてことに使ってやがんだよ……」
重い空気が流れる。全員がスバルの抱く感情を思い、どうにかならないものかと頭を悩ませる。災害などで自分一人が生
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