第二百四十五話 夜においてその八
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「拙者は政も好きなので」
「政でも国を富ます」
「そうも考えておられますか」
「如何にも」
こう答えるのだった。
「政があってこそです」
「国は富み民も喜ぶ」
「そうなりますな」
「かつては天下を目指していましたが」
奥羽を統一してそれからと考えていたのだ、政宗はその隻眼で天下を見据え号令することを目指していたのだ。
しかしだ、今はというと。
「そのつもりはもうありませぬ」
「天下は上様のもの」
「だからですな」
「はい、そのことがわかったからこそ」
信長と戦い彼を知ってだ。
「拙者は今は国をより大きくすることを考えています」
「ご自身のですな」
「仙台だけでなく」
「それが二百万石」
「それだけのものを目指されていますか」
「支倉常長をです」
家臣の一人だ、伊達家の。
「あの者も遣わそうと考えていますし」
「遣わすとは」
「どちらに」
「南蛮の国々に」
そこにというのだ。
「上様の送られる使者と共に」
「そして南蛮を知る」
「あちらをですな」
「そうも考えています」
こう言うのだった。
「南蛮と戦になろうとも」
「戦の合間にもですな」
「相手を知る」
「そのこともですな」
「知られるつもりですか」
「はい、そのつもりです」
政宗は二人にこの考えも話した、そして。
赤い酒を出してだ、二人に問うた。
「如何でしょうか」
「それは南蛮の酒ですな」
「確か葡萄で造った」
「ワインというものです」
二人に出してその場に座りつつ言った。
「飲まれますか」
「南蛮の酒もあるとは」
「それを出されるとは」
「これもまた美味いですぞ」
ワインのその味も言うのだった。
「ですから」
「我等にですか」
「馳走して頂けますか」
「左様です」
その通りだというのだ。
「召し上がられよ」
「ふむ、南蛮の酒とは」
「これまた珍妙な」
「それがしの秘蔵です」
そうした酒だというのだ。
「さあ、どんどん飲まれよ」
「では有り難く」
「頂きます」
元就と氏康も応えてその葡萄酒を飲むのだった、彼等もまたその夜は酒を楽しんでいた。それは元親もでだ。
島津四兄弟と共に飲みだ、笑って話した。
「この酒はよいですな」
「焼酎がですな」
「実によい」
「そう言われますな」
「同じ酒でも」
それでもというのだ。
「こうした酒もありますか」
「造り方によってです」
「味や酒の強さが変わりまして」
「薩摩の酒はです」
「焼酎が多いのです」
「成程、天下が豊かになれば」
元親はその焼酎を楽しみつつ言った。
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