巻ノ三十一 上田城の戦いその十
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「御主達は土じゃ」
「ははは、土の術も任せて下され」
「それがし確かに最も好きな術は土です」
「そういうことじゃ、それぞれの気があるのじゃ」
五行の中のというのだ。
「そしてそのそれぞれをな」
「我等は使い」
「互いにですか」
「御主達は一人一人でも確かに強い」
幸村も認めることだ。
「まさに一騎当千しかしな」
「互いに助け合えばですか」
「さらに力を発揮する」
「そうなりますか」
「そうじゃ、一騎当千の者でも一人ならば限りがある」
その強さにというのだ。
「当千といっても精々そこまで」
「一人だけならですか」
「所詮はそこまで」
「ですが十人ならば」
「殿と共にいれば」
「それは十倍にも二十倍にもなる」
その強さはというのだ。
「そうなる、だからな」
「我等はこれよりもですな」
「互いに助け合い」
「そして戦うべきですか」
「常に」
「そう思う、そもそも我等は義兄弟」
このこともだ、幸村は言った。
「常に共にあると誓っておるな」
「はい」
「その通りです」
「我等確かに誓いました」
「生きるも死ぬも同じ」
「決して離れることがないと」
「だからじゃ、共に戦えばな」
十一人でというのだ。
「それは凄まじき力になろう」
「この徳川家にも」
「見れば見る程強いですが」
「その徳川家の軍勢にもですな」
「遅れは取りませんか」
「臆することはない」
これが幸村の返事だった。
「胸を張り入ろうぞ」
「そうじゃ、わしも臆することはせぬ」
信之もここで言った。
「これでも真田家の次の主、ならばな」
「はい、胸を張りですな」
「堂々と行き伝えようぞ」
「我等の返事を」
「鳥居殿は今は決して手を出されぬ」
信之も言うのだった。
「徳川家はな」
「戦がはじまるまでは」
「やはり徳川家は律儀の家じゃ」
主の家康がそうであるとの評判通りというのだ。
「そうしたことはされぬ」
「ですな、戦までは」
「それに何かあってもな」
万が一、いや億が一徳川家が使者である彼等に手出しをしてきてもというのだ。
「逃れるぞ」
「はい、剣や忍の術を使い」
「そうした時こそ真田の術を使いな」
「逃れますな」
「しかもこの達もおる」
信之も十人を見て言うのだった。
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