巻ノ三十一 上田城の戦いその九
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「準備は整っているというしな」
「そしてですな」
「それに死ぬ時は共にと誓っておるな」
「はい、義兄弟として」
「それならばじゃ」
是非にと言うのだった。
「御主達は共に行け」
「そう言われますか」
「わしも一緒じゃがな」
「兄上もそう言われるのなら」
幸村は深く考える顔になってだった、そしてだった。
そのうえでだ、十人にこう言った。
「わかった、ではな」
「はい、有り難うございます」
「それではです」
「共に参りましょう」
「徳川殿の本陣まで」
「うむ、やはり我等は常に共にいることになるな」
今は微笑んでだ、幸村は言った。
「そうした運命の様じゃな」
「そうですな、やはり」
「我等は共に生きる運命にあります」
「常に共にあり」
「そして戦いの場に赴く」
「それが我等ですな」
「その様じゃな、では行こうぞ」
こうしてだった、幸村は十人の家臣達を連れて兄と共に徳川家の本陣に向かった。その徳川の陣を見るとだ。
黄色の旗が立ち黄色の具足の兵達がいた。その彼等を見てだ。
十人は確かな笑みを浮かべてだ、こう言った。
「見事ですな」
「徳川家の黄色は何時見てもいいですな」
「何処でも映えまする」
「よい色です」
「そうじゃな、黄色は土の色じゃが」
幸村は五行思想から話した。
「その土がじゃ」
「我等の前に来ておりますな」
「赤の我等に」
「その前に」
「火は土に負ける」
ここでも五行思想から言う幸村だった。
「そうなっておる、しかしな」
「それでもですな」
「それは覆せる」
「左様ですな」
「そうじゃ、しかも拙者も火の気を持つ様じゃが」
幸村は自分のことからまた話した。
「御主達はそれぞれの気がある」
「それがし達もですか」
「それぞれですか」
「気がありますか」
「うむ、佐助と鎌之助は木じゃな」
まずはこの二人のことからだ、幸村は話した。
「山での戦を得手としておるしな」
「確かに。それがし達は」
「言われるとそうですな」
「才蔵と海野六郎は水じゃ」
この二人はこちらだというのだ。
「才蔵は霧を使いこちらの六郎は水での戦が大の得意であるからな」
「言われてみれば」
「左様ですな」
二人も納得する、そして。
幸村はさらにだ。今度は穴山と筧に言った。
「小助と甚八は金か」
「鉄砲を使うから」
「雷も使うからですな」
「そうじゃ、御主達はな」
まさにというのだ、そして次は。
「伊佐と望月六郎は火か」
「確かに。拙僧気だけでなく火の術も得意です」
「拳に火も使いますぞ」
「だからな、そして最後はな」
幸村は残った清海と筧に言った。
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