前編
8.冗談はクレープだけにしろ
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「ところでさー」
「んー?」
「今更だけど、球磨姉のことどう思ってるの?」
季節は初秋。残暑はまだ厳しいが、夏の間あれだけ猛威を振るっていたセミたちがその戦慄の求愛ソングを歌うのもやめはじめ、地上に平穏が戻り始める季節。
毎日のように店に来ては、待ってる客用の漫画を次々読破していく北上は今日、読んでる漫画から目線を外さず、いつものように気の抜けた話し方で、俺にこんなとんでもない質問をしてきた。俺はこの時、客が来ないのをいい事に道具の手入れをしていたのだが……質問をされた時、俺は気分がひどくげんなりして、手入れを続ける気が萎えた。
「……どういう意味だそりゃ?」
「そのまんまの意味だよ」
「なんでまた突然そんな思春期な質問してくるんだよ」
「だってさー。二人とも仲いいじゃん」
思い当たるフシは全くない。そういえば提督さんにも以前に妙なこと吹き込んでたなぁこの妖怪漫画女は。
「あの妖怪アホ毛女のことなぞなんとも思ったことないぞ?」
まぁ、仲いいのかどうかは知らんが……みんなの中でも割と気を使わなくていいから、付き合ってて楽だけどな。
「それを仲いいって言うんだよハル……」
「そうか? そういう意味で仲いいってのはさ……もっとこう、妙に甘いというか何というか……」
「たとえば?」
「例えば? うーん……」
俺は自身の想像力をフル回転させ、『そういう意味で仲のいい二人』というのを、俺と球磨でイメージしてみた。その結果……
――球磨……俺は、お前を愛している……(イケメンボイス)
球磨も、ハルを愛してるクマ……(陸奥(って誰だ?)みたいな色っぽい声)
という、俺と球磨にまったく似つかわしくないイメージ映像が脳内で流れ、ひどくげんなりした気持ちを抱えてしまった。北上も同じく妙にげんなりした表情をしている辺り、まったく同じイメージを想像していたのかもしれない。
「似合わないな……」
「だよね……特に球磨姉は……」
しかもなんだ? そんな甘い雰囲気の時ですら、あの妖怪アホ毛女は語尾に『クマ』ってつけるんか?
「それは球磨姉だから仕方ないよねー」
「妹の北上がそう言うと、説得力あるな」
「でしょ?」
でも北上は、なんだって突然そんなこと聞くのか?
「いや、だってさ。耳掃除の時にわざわざ膝枕してあげてるの、球磨姉だけでしょ?」
「だなぁ……」
言われてみればそうだ。正式サービスとして耳掃除を始めた後は、初めての客である提督さんと同じように、散髪台のシートのリクライニングを限界まで倒して耳掃除してるもんな。球磨の時は不思議と『耳掃除なら膝枕だな』って何の疑問も持たずに膝枕してるし。
「しかもハル、他の子に膝枕を頼まれても、頑とし
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