前編
8.冗談はクレープだけにしろ
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ないあんちゃんには一度覚醒していただく必要があるようだ」
「か、かんべんしてくださいよぉ〜……」
あんちゃんいじめも程々に、俺と球磨はその凶悪やクレープを食いながらお店を後にする。……あ、当然というか何というか、俺のおごりだった。球磨が持つクレープは、その大きさこそすさまじい呪いのアイテムみたいな代物だったが、味の方は確かなようで……
「確かにデカすぎだけど味はいいクマ」
と球磨は上機嫌でガツガツとクレープを平らげていった。俺が注文したカスタードと生クリームのクレープも味は絶品。おかしな誤解を受けはしたが、あのあんちゃんの腕は確かなようだ。一時は永遠にクレープ屋が開けないようにしてやろうかとも思ったが、これだけの腕の職人、失うには惜しい。生きながらえさせてやることに決めた。
「ハル」
口の周りにちょこちょことクリームをつけて、球磨が上機嫌で俺を呼ぶ。
「ん? なんだ?」
「ちょっと食べるクマ?」
「お、くれるの?」
「やらんクマ」
「だったら聞くな妖怪クレープ女」
「欲しいクマ?」
「……白状すると、ちょっと食ってみたい」
「んじゃ一口だけやるクマ」
口周りにクリームをつけた球磨が、100万ドルの笑顔と食べかけのクレープを俺に向けた。その時の球磨の表情は俺に、いつぞやの妖怪ハニカミ女を思い出させた。
球磨がこちらにつきだした、くそたわけた名前のクレープを一口だけもらう。奇しくも、あのクレープ屋のあんちゃんが言った通り、この凶悪なクレープは俺と球磨の二人で食べることになった。
「……ん。んまい」
「んふふー。これを注文した球磨に感謝するクマ!!」
「味がどうこうとかじゃなくて、あのふざけたネーミングが気になって注文したんだろ?」
「確かにそうだけど、結果が正解なのは確かだクマ! もうあげないクマ〜」
確かに、こいつがサボると言い出したおかげでおいしいクレープ屋さんを見つけることが出来たし、こいつが注文したから、この美味しい凶悪クレープを食べることが出来た。これは、この球磨の功績と言ってもいいだろう。
「おう。ナイスだ球磨。さすが妖怪アホ毛女」
「その呼び名はムカつくとしても、素直に賞賛を送ったハルを褒めてつかわすクマ」
「はいよ」
どうせ今日は店じまいしたし、もう少しサボってから帰ってもいいだろう。相手が球磨じゃ、色気もへったくれもないが……
「クマクマっ」
ああやって上機嫌で巨大クレープを食いながら歩く妖怪クレープ女を眺めながら、のんびりと散歩するのも、悪くない午後の過ごし方だ。
「これは素晴らしいクレープ屋を見つけたクマ! ハル! また今度おごるクマ!!」
少し傾いてきた太陽に照らされた球磨は、鼻にクリームをつけたまま
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