前編
8.冗談はクレープだけにしろ
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やがったからだ。
――ニヤリ
魚の匂いが漂う魚屋さんに到着する。球磨は……いやがった。なんか店頭に並べられてる魚をぼんやりと眺めているようだ。
「なにやってんだよ」
「クマっ?! 果物屋と八百屋は?」
「もう行って注文済ませてきたよ」
「中々早いクマね」
「お前が遅いんだよ」
こんな風に俺と球磨は軽口を叩き合うが、球磨は自身が見つめているものから視線をはずさない。この妖怪棒立ち女の視線の先を追ってみる。
「……鮭?」
「クマっ」
この妖怪アホ毛女の視線の先にあったのは、一匹の鮭だった。そいつは丸々一尾そのまま売られていた。こんなもんが欲しいのか球磨……
「欲しいクマね。クマだけに」
「さっぱりわからん……」
「知らないクマ? 熊はよく川で……」
「今の段階で属性てんこもりなのに、まだ足りないのかお前は……」
「シャレの通じない堅物だクマ」
と口ではちょっとごきげんななめなことを言いながらも、本人は大してへそを曲げているようには見えなかった。さっぱり意味が分からん。とりあえずこの地上最大の哺乳類のことは放っておいて、俺は魚屋の大将に注文したい品々を注文する。といってもイカぐらいだけどな。
「はいまいどー!! らっしぇ! らっしぇ!!」
威勢のよい大将の柏手に負けそうになりながら、イカの注文をするおれ。球磨、お前肉屋の方は?
「終わったクマよ? ハルが来るのが早いんだクマ」
「お前が終わらせるのが遅いんだろう……」
「ハルー」
「んー?」
「この鮭も買っていくクマ」
「いらん」
「女の子にプレゼントもあげないとはなんという男だクマッ!!」
そう言って憤慨している球磨だが、どこに鮭一尾まるごとを欲しがる女がいるのかと小一時間説教をくれてやりたい。
「ここにいるクマっ」
お前は除外だ……。
大将にイカの発注も終わり、乾物屋に行って調味料諸々を注文して、今回の出張は終わりだ。球磨、お疲れさまでした〜。
「ちょっとサボってから帰るクマ」
鼻の穴を広げながら、こんな提案をする球磨。確かに市街地に出るのは久しぶりだし、ちょっとばかしサボってもいいかもしれん。
「そうだな。たまにはちょっとサボるか」
「クマクマっ」
ちょうど今しがた出た乾物屋の向かいには、クレープ屋さんがある。ちょっと買い食いしてくか。久々に甘いものも食べたいしな。
「ハルのおごりで」
「こういう時だけしっかりしてやがる……」
というわけで、色気のない妖怪シャケ女を引き連れてクレープ屋さんに向かう。店に近づくなり、俺達の鼻に漂ってくるクレープの甘い香り……うーん……こういう香りをかぐと、いい感じに腹が刺激されるね。
「はいい
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