第5章 汝平和を欲さば戦に備えよ
第42話 駆り立てるのは野心と野望、横たわるのは猫と豚
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だった。ポケットに手を突っ込むという、舐めた格好をしていたから、見誤った。目に留まらぬ速さで、ポケットから手を出すと衝撃波を飛ばしてくるのだ。しかも、速さ、範囲、威力ともに高い。いまは毒霧でなんとか対抗できているにすぎない。実力では敵わない、そんな事実に驚愕していた。
白音も負けていない。黒歌は白音を傷つけることができない。どうしても、手心を許してしまう。そんな白音にインファイトをしかけられると、戦いづらかった。それに、彼女が放つ『ディバインバスター(物理)』や『スターライトブレイカー(物理)』といった技は、無意識に仙術を使っている。妹の成長に喜ぶ一方、攻めあぐねていた。
そのとき、ドンというひときわ大きな衝撃音がした。黒歌の優れた知覚は、それが何かを悟った。
「アインハルトのほうは、決着がついたようにゃん――というか、やりすぎよ」
なんですって!? とリアスが絶叫する。タンニーンは、元竜王、最上級悪魔だ。冥界でも上から数えるのが早い圧倒的強者である。それが敗れる――にわかには信じがたかった。
が、音の方をみて絶句する。タンニーンたちが戦っていたあたりから、パーティー会場に向かって、一直線に破壊の跡があったのだ。
黒歌相手に善戦していた彼女たちだが、ここにアインハルトが加われば、とてもではないが敵わない。どうすればよいのか、焦るリアスをみて、にやりと黒歌は嗤った。が、そこまでだった。
「そこまでです。悪魔側は、大パニックです。勝手に戦争でも起こすつもりですか?」
背広を着た若い男性。手に持つのは聖なる力を発する聖剣──聖王剣コールブランド。禍の団アーサーだった。黒歌に向かって、帰還命令を告げる。しかし、黒歌は渋りに渋った。
「どうせ、いつか戦争を起こすんでしょ? なら、今だっていいじゃない」
「旧魔王派のことですね。彼らは勝手に動いているだけです。禍の団の総意ではありません」
「アーサーのいう通りです。それに、派手に動きすぎました。パーティー会場から魔王クラスが多数こちらに向かってきています」
こちらに合流してきたアインハルトが、黒歌に帰還を促した。黒歌も強大な気配がこちらに向かってきていることがわかる。もはや潮目は変わったといってよかった。
「グレモリーの悪魔ども、今日はこれくらいにしておいてあげる。――白音、またね」
リアスたちをにらみつけたあと、子猫に向けて微笑み、撤退していった。……黒歌姉さん、と震える声で子猫は呟いた。
◆
この日、悪魔側は、元竜王タンニーンを失うという大打撃を受ける。さらに、サーゼクス・ルシファー主催のパーティーには親魔王派の悪魔たちが集っていた。そこに、アインハルトが放った魔力衝撃波が撃ち込まれ
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