第37話
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せられる。
「張義!!」
「今だ野郎共! 引けぇッッ!!」
『応!!』
そう、自ら上る必要など無いのだ。
側近の一人、張義。特に打ち合わせたはずでもないのに彼は華雄の考えを理解し。
彼女の合図と共に部下達に縄を引っ張らせた。
「させるか!」
当然、李典達がそれを見てみぬふりするはずがない。
梯子と共に上がっていく華雄に対し、再び矢の嵐を浴びせる。
「フンッ!」
華雄はそれを得物を握っている右手で先程のように弾く。これまでの展開、全て計算通りだ。
双方の軍が門に注目する中、華雄は曹操軍の配置を上から確認していた。
衝車の周りに居るのは李典を始めとする工作兵、その後ろに援護の弓隊。
門まで衝車を運んできた騎馬隊は、邪魔にならないようその後方に布陣している。
――いける!
敵中に将が降り立つという異常事態、それに加え衝車が破壊されれば、動揺で数瞬動きが止まるだろう。
後は精鋭の騎馬隊が来る前に、引っ張り易い縄梯子で離脱すれば良い。
一見無謀にしか映らない行動、それら全て華雄の計算通りだった。
そしてその証拠とでも言うが如く水関の中腹まで上がった頃、彼女の眼下に曹操軍の騎馬隊が到着していた。
――ほう、神速の名に恥じぬ速さだ
もう少し離脱が遅れていたら……自身を睨む将と相対していた。
たとえ討ち破れたとしても、後に続く兵士達に多勢に無勢で成す術もなかっただろう。
華雄は――賭けに勝ったのだ!
「華雄様お怪我は!?」
「私は大丈夫だ、張義はどうした?」
「ッ……それが」
「……そうか」
華雄を引き上げるため、彼女の兵達は手に持っていた矢避けの盾を手放していた。
部下達が言いよどむあたり察しがつく。
口の悪い側近だった。だが古株で、誰よりも華雄の考えを理解できる人物だ。
彼なしに衝車の破壊は成しえなかっただろう。
「よくも、よくもウチの二号をぉぉ」
短く追悼を送る華雄の耳に悲痛な声が聞こえてきた。
李典だ、大破した衝車に被さり嗚咽を洩らしている。
「ウチは怒ったで華雄ッッッ!」
顔を上げた彼女が右手を振る、それに呼応して旗が振られ始めた。
どうやら何かの合図のようだ。
「負傷者を下がらせ、その穴を予備隊で埋めろ」
「ハッ」
「盾隊を再組織、梯子を掛けられた時の為に大斧の準備も急げ!」
油断無く指示を送る、窮地は脱したが敵方の合図が気がかりだ。
よもや自動衝車以上の物を用意しているとは思えないが……
「ああそんな、……華雄様」
「?―――ッ!!」
側近の悲痛な声に、華雄は彼の目線
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