第37話
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「いっけぇッ二号! お前の兄の…ぶんも……グスッ」
李典の脳裏に忘れられない光景が蘇る。
自動衝車を完成させた彼女は、すぐさま主である華琳に報告した。
その未知の原理に驚きを隠せない覇王、得意げに胸を張るカラクリ娘。
『耐久性は確かなのでしょうね?』
『へ?』
門破壊を目的とするなら、阻止しようとする敵の攻撃を考慮し頑丈でなければならない。
しかし、カラクリにばかり夢中になっていた李典には寝耳に水な確認だった。
『だ、大丈夫です。素材には頑丈なものをつこうてますし、生半可な攻撃には――』
『春蘭』
『ハッ!』
『――びくともしません……って、あーーッ!!』
自信の傑作に向かって拳を振り上げる春蘭に悲鳴を上げる。
考慮していなかったとはいえ耐久性には自信がある。しかしそれは矢や大斧による一撃に対してだ、断じて曹操軍が誇る武神の一撃ではない!
『……』
『……スマン』
春蘭の一撃は見事に傑作を半壊させた。否、修復不可能な時点で全壊と変わりない。
これにはさすがの春蘭も気まずくなり、一言謝罪しその場を後にした。
大破した『一号』を前に李典は唖然とし、周りはそんな彼女に何と言葉を掛けるべきかと慌てていたが――
『耐久性は重視させなさい。いいわね?』
『…………ハイ』
そんな放心状態の李典に対し、華琳は容赦なく改善するよう命を出す。
一つ間違えればトラウマになりかねない出来事、しかし華琳は李典の瞳が熱を帯びたのを見逃さなかった。
「いっけぇ二号!」
苦い記憶だが、おかげで二号の耐久性は折り紙つきだ。
敵方が衝車を破壊しようと矢の雨を降らせる、びくともしない。
燃やそうと火矢に変える。生憎、二号は鉄製だ。
ついには人の頭ほどの大きさの石を落とし始めた、傷一つ付かない。
二号は春蘭の一撃を意識して作られたのだ、この程度の衝撃で壊せるはずも無い。
華雄軍の攻撃も虚しく、衝車の一撃で再び水関が揺れる。
「あ、姉御ォ……これは不味いぜ」
「……ッ」
部下達の手前、これまで毅然としていた華雄も動揺が隠せない。
巨石を運ばせてはいるが如何せん時間が掛かる。恐らく到着前に門が破壊されるだろう。
一見詰みだが、手はまだある――華雄だ。
華雄とその得物『金剛爆斧』の一撃を持ってすれば破壊できるはず、しかしそれが出来るなら苦労はしない。
水関の門はすでに内側から固く封鎖してあった。
連合は四日目で三軍を導入するという、熾烈な攻勢を仕掛けてきた。
賈駆の話しを考慮するなら、次はそれを超える攻撃にでるはずだ。
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